――深夜
「……」
俺はハンモックから抜け出すとトラックに乗り込んでキーを回し、カーナビの電源を入れる。
そろそろなにかしら情報をくれても良さそうなもんだがなにやってんだろうな?
「さて……」
俺は腕を組んで暗い画面に目を向ける。
15分くらい経ったところで反応が無く、ダメかとカーナビに近づいて手を伸ばしたその時だった――
『おう!? デカい顔!?』
「余計なお世話だ!? 久しぶりだなルアン」
『そうね、二か月は経ったかしら? どう、そっちの生活は』
相変わらずカメラの向きが違うのか。俺から見てルアンはそっぽを向いた状態で会話を続ける。
「おかげさんで楽しくやれているよ。母ちゃんの薬もなんとかなりそうだ」
『あら! それはいいわね! こっちはクソ同僚のせいでちょっと面倒なことになっているのよね』
「クソ同僚?」
『まあ、ちょっとヒサトラとも関連があるんだけどさ――』
口を尖らせたルアンが話しだした内容はこうだ。
なんでもこの世界はルアン以外にも別の女神が居て崇拝されているらしい。特になにかをするわけでなく、なんとなく恵みを与えてみたり、魔王が生まれたら人間に知恵を授けたり……そういうちょっかいをかけるのだとか。
だが今回、本来ここへ来るはずだった人間ではなく俺をトラックごと呼んだのが気に入らないとかでもう一人の女神が上司に告げ口をした。
そのせいでこっちに干渉しにくくなり、あまり出てこれないということだとかなんとかをブチブチ文句を言い出すルアン。
しかし、上司も鬼では無く世界に重大な危機を及ぼしたであろうことを踏まえて判断としては悪くなかったとお咎めは無かったらしい。
『まあ、そんな感じで今もこそっと通信をしているわけだよスネーク』
「誰がスネークだ」
それはソリッド様に言ってやって欲しい。
「とりあえず会えたのはありがたい。聞きたいことがあったからな」
『なに?』
「母ちゃんのことだ。薬が早めに完成したらこっちに呼ぶことはできるか? 三年以内に死ぬならまだ先はあるが、できれば俺も母ちゃんも安心したい」
『あー、なるほどね。どれくらいでできそうなの? それに合わせて儀式を行うわ。あのクソ女神に見つからないように』
とりあえずそれは可能らしいので俺は安堵する。
なら早いところ素材を集めるべきだな。ここのところ散財をしているが、冒険者に採って来てもらう選択肢も視野に入れていいかもしれない。
本腰を入れるか……
「わかった、すぐに集めて薬を作る。お前がここに来れるかどうかの目安はあるか? ランダムだといざ頼みたいときに声をかけられないのは困る」
『そうねえ……夜2時位はこっちも静かだから呼んでくれれば応じられるかもしれないわ』
「オッケー、確実じゃないけどってことだな。よろしく頼む」
『任せといて! お母さんの容体はまだ安定しているから安心していいわ』
そう言って明後日の方向へウインクするのを見た後、カーナビの電源を落として俺はシートに背を預けて目を瞑る。母ちゃんを助ける。そこさえクリアすれば後はどうにでもなる、また明後日から頑張るとするか――
◆ ◇ ◆
「いい芝を作ったぜ!」
「すげぇ、よく写真を見ただけで作れたな……」
「職人ってやつよ! じゃあなヒサトラ、俺達はこっちだ」
「おう」
さて、ゴルフ場建設は着々と進んでいるようで、門の前で職人たちと別れる。
俺達は今日も今日とて運送業をしながら情報を得るためあちこちのギルドやらに声をかけまくることにした。
「レッドスライムか……ちと面倒な相手だから値が張るぞ」
「そうなのか?」
「ああ、ベヒーモスが居るなら自分達でやった方が早いぜ? 瓶を持っていって捕まえりゃいくらでも絞れるだろ」
――残りはマンドラゴラの根、レッドスライムのしぼり汁、ロックウォールナッツの場所だが、スライムとナッツはそれほど問題にならないくらい有名なようで、すぐに手に入りそうだった。
後は時間があれば、というところだがマンドラゴラの根が難しいようで、どの国にもいるけど、ごく少数しか生育していないのだとか。
「ならレッドスライムとロックウォールナッツを先に終わらせちゃいましょうよ」
「そうするか……レッドスライムは確か、南西の湿地帯にいるらしい。次の休みはそこだな」
<わおーん♪>
そしてロックウォールナッツは商人が王都に運んできてくれたのですぐに売ってもらい、事なきを得ることができたが、湿地帯に到着した俺達を待っていたのはなかなかヘビーな状況だった。
「……居なくね?」
「なんか殺伐としてますね」
話だと結構すぐ見つかるみたいな話だったんだが、スライムらしき影はどこに見当たらなかった……なにが起こっているんだ?
「……」
俺はハンモックから抜け出すとトラックに乗り込んでキーを回し、カーナビの電源を入れる。
そろそろなにかしら情報をくれても良さそうなもんだがなにやってんだろうな?
「さて……」
俺は腕を組んで暗い画面に目を向ける。
15分くらい経ったところで反応が無く、ダメかとカーナビに近づいて手を伸ばしたその時だった――
『おう!? デカい顔!?』
「余計なお世話だ!? 久しぶりだなルアン」
『そうね、二か月は経ったかしら? どう、そっちの生活は』
相変わらずカメラの向きが違うのか。俺から見てルアンはそっぽを向いた状態で会話を続ける。
「おかげさんで楽しくやれているよ。母ちゃんの薬もなんとかなりそうだ」
『あら! それはいいわね! こっちはクソ同僚のせいでちょっと面倒なことになっているのよね』
「クソ同僚?」
『まあ、ちょっとヒサトラとも関連があるんだけどさ――』
口を尖らせたルアンが話しだした内容はこうだ。
なんでもこの世界はルアン以外にも別の女神が居て崇拝されているらしい。特になにかをするわけでなく、なんとなく恵みを与えてみたり、魔王が生まれたら人間に知恵を授けたり……そういうちょっかいをかけるのだとか。
だが今回、本来ここへ来るはずだった人間ではなく俺をトラックごと呼んだのが気に入らないとかでもう一人の女神が上司に告げ口をした。
そのせいでこっちに干渉しにくくなり、あまり出てこれないということだとかなんとかをブチブチ文句を言い出すルアン。
しかし、上司も鬼では無く世界に重大な危機を及ぼしたであろうことを踏まえて判断としては悪くなかったとお咎めは無かったらしい。
『まあ、そんな感じで今もこそっと通信をしているわけだよスネーク』
「誰がスネークだ」
それはソリッド様に言ってやって欲しい。
「とりあえず会えたのはありがたい。聞きたいことがあったからな」
『なに?』
「母ちゃんのことだ。薬が早めに完成したらこっちに呼ぶことはできるか? 三年以内に死ぬならまだ先はあるが、できれば俺も母ちゃんも安心したい」
『あー、なるほどね。どれくらいでできそうなの? それに合わせて儀式を行うわ。あのクソ女神に見つからないように』
とりあえずそれは可能らしいので俺は安堵する。
なら早いところ素材を集めるべきだな。ここのところ散財をしているが、冒険者に採って来てもらう選択肢も視野に入れていいかもしれない。
本腰を入れるか……
「わかった、すぐに集めて薬を作る。お前がここに来れるかどうかの目安はあるか? ランダムだといざ頼みたいときに声をかけられないのは困る」
『そうねえ……夜2時位はこっちも静かだから呼んでくれれば応じられるかもしれないわ』
「オッケー、確実じゃないけどってことだな。よろしく頼む」
『任せといて! お母さんの容体はまだ安定しているから安心していいわ』
そう言って明後日の方向へウインクするのを見た後、カーナビの電源を落として俺はシートに背を預けて目を瞑る。母ちゃんを助ける。そこさえクリアすれば後はどうにでもなる、また明後日から頑張るとするか――
◆ ◇ ◆
「いい芝を作ったぜ!」
「すげぇ、よく写真を見ただけで作れたな……」
「職人ってやつよ! じゃあなヒサトラ、俺達はこっちだ」
「おう」
さて、ゴルフ場建設は着々と進んでいるようで、門の前で職人たちと別れる。
俺達は今日も今日とて運送業をしながら情報を得るためあちこちのギルドやらに声をかけまくることにした。
「レッドスライムか……ちと面倒な相手だから値が張るぞ」
「そうなのか?」
「ああ、ベヒーモスが居るなら自分達でやった方が早いぜ? 瓶を持っていって捕まえりゃいくらでも絞れるだろ」
――残りはマンドラゴラの根、レッドスライムのしぼり汁、ロックウォールナッツの場所だが、スライムとナッツはそれほど問題にならないくらい有名なようで、すぐに手に入りそうだった。
後は時間があれば、というところだがマンドラゴラの根が難しいようで、どの国にもいるけど、ごく少数しか生育していないのだとか。
「ならレッドスライムとロックウォールナッツを先に終わらせちゃいましょうよ」
「そうするか……レッドスライムは確か、南西の湿地帯にいるらしい。次の休みはそこだな」
<わおーん♪>
そしてロックウォールナッツは商人が王都に運んできてくれたのですぐに売ってもらい、事なきを得ることができたが、湿地帯に到着した俺達を待っていたのはなかなかヘビーな状況だった。
「……居なくね?」
「なんか殺伐としてますね」
話だと結構すぐ見つかるみたいな話だったんだが、スライムらしき影はどこに見当たらなかった……なにが起こっているんだ?