貴族といってもトライドさんみたいな領主というわけではないので、実はアリーの屋敷はそこまで大きくない。
ただ、マトリアさんと旦那さんも一緒に住んでいるため庭に別宅を建てているのだという。
結構、親とは別居していることが多いのが貴族らしいけどアリーの母親は早くに亡くなっていて、さらに親父さんが病に臥せっているので同居しているのだとか。
俺と違い父子家庭ってやつだ。
サリア、アリー、ビリー、ジミー、そして俺が屋敷からいったん外に出て庭に向かう。すると
<む、ヒサトラ終わったか?>
「いや、まだだ。シルバードラゴン、もうちょっと待てるか?」
<ジジイは暇じゃからゆっくりでええぞ。人間と話すのも面白いわい>
<我も待てるぞ>
「張り合うなよ」
苦笑しながらダイトの背中を撫でてみんなの後を追うと、立派な花壇の中心に家があった。
マトリアさんは指でついてこいと指示し、家の中へ。
ちなみにソリッド様は他国の事情に関われないからとトラックで寝ていたりする。おいてくれば良かった。
「ふうん、ドラゴンだけじゃなくベヒーモスもかい。面白いヤツだねえホント」
「ん?」
「なんでもない、こっちだよ」
さて、そんな一軒家にはいると普通のリビングにキッチンがあり、ぞろぞろと中へ入っていくとリビングのソファで寝転がっている爺さんがこちらに気づいた。
「お? どうしたマトリア、客か?」
「昼間っからゴロゴロしてんじゃないよ、たまには剣を振ったらどうだい」
「固いこと言うなよ、今日は休日だ」
「あんたは毎日が休日だろ? 紹介するよ、こいつは私の旦那だ」
タンクトップのおっさんがシュタっとソファから立ち上がると190cmくらいはある体を震わせて笑う。
「はっはっは、俺の名はデイルってんだ。よろしくな」
「ヒサトラです」
「サ、サリアです」
<きゅん!>
銀髪をオールバックにした大男は手もでかかった。サリアがびっくりし、物怖じしないアロンが一声鳴くと、頭に手を置いてから言う。
「おう、変わった犬だな?」
「それはベヒーモスの子だよ。あんたの好きそうなのが庭に居るから行って来な」
「なんだ? じゃあちょっと出てくるわ、ゆっくりしていきなよ兄ちゃんたち!」
「……慌ただしいな」
「爺さんが居るとうるさいからね、ベヒーモスとシルバードラゴンならちょうどいいよ」
酷い。
挨拶もそこそこに飛び出していったデイルさんをよそに俺達はマトリアさんについていくと地下室へと案内される。アリーが見た図鑑というのもここにあったものだそうだ。アリアの花を教えてもらった時はまだここに戻れるとは思っていなかったため、ぬか喜びはさせたくないと曖昧にしていたらしい。
「久しぶりなんですよ私も」
「小さい頃はよくこっちにいたもんだけど、学校に行き出してからはさっぱりだったからね」
くっくと笑いながら地下室の灯りをつけると――
「わあ……」
「凄いな……!?」
――部屋にびっしりと本が詰まっていた。魔法使いの名に相応しいと感心するくらいには多い。
「まあ、魔法使いはこれくらい持っているもんさ。最近は魔道具が流行りだしたから魔法の修行をする人間も冒険者くらいになったがね」
少し残念そうな声色でそう言った後、さっそく本題に入る。
俺達はその辺の床に座り、聞く態勢を整えるとマトリアさんは本を片手に口を開く。
「さて……お主の探している万病治療薬の名は‟オポロミオ”と言ってな、伝承ではあらゆる病に聞いたと記されている」
「胡散臭い」
「くく、まったくじゃな。どの程度かという記述については不治の病が治ったくらいしか書かれておらん。だが、こうやって残っている限り信憑性はあるじゃろ」
「まあ、ルアンが『ある』と言っていた以上なにかしらはあるだろうし……それがそのオポビタンであって欲しいって感じだな」
「ヒサトラさんオポメミンですよ」
「オポロミオじゃ」
栄養ドリンクみたいな名前や信憑性はどうでもいいとして、手に入れられるものは手に入れておくべきだろう。
「まあそのあたりのことはどうでもいい。材料のことを聞かせてくれ」
「とりあえずアリアの花とデッドリーベアの蜜は聞いていますけど」
「そうだね、で、竜の牙は手に入れられるから除外しようか」
「あ、それで少し揃っているって言ってたのか」
頷くマトリアさん。
そこからは微妙に手に入れにくそうなものが羅列される。
材料は……
・アリアの花
・デッドリーベアの蜜
・ドラゴンの牙
・ジュエリーサンゴ
・レッドスライムのしぼり汁
・ロックウォールナッツ
・マンドラゴラの根っこ
この七つだ。
とりあえず上三つは終わっているが残り四つ。すぐに手に入るものなのか?
「ジュエリーサンゴはまあ漁師に頼めば出てくるじゃろ。お高いかもしれんがな。ロックウォールナッツは中身を取り出すのが面倒くさいわい。レッドスライムは湿地帯にいけばなんぼでもおるが、生け捕りが難しい」
「マンドラゴラは? こいつ、抜いたら叫ぶとか聞いたことがあるけど」
「ああ、そいつは楽じゃ。抜く前に土の中で黙らせてしまえばええ」
麻痺させるとか口がある辺りをあらかじめ塞いでおくらしい。そんな方法があるとは……
とりあえず面倒そうだが目標があるのはありがたいな。
ただ、マトリアさんと旦那さんも一緒に住んでいるため庭に別宅を建てているのだという。
結構、親とは別居していることが多いのが貴族らしいけどアリーの母親は早くに亡くなっていて、さらに親父さんが病に臥せっているので同居しているのだとか。
俺と違い父子家庭ってやつだ。
サリア、アリー、ビリー、ジミー、そして俺が屋敷からいったん外に出て庭に向かう。すると
<む、ヒサトラ終わったか?>
「いや、まだだ。シルバードラゴン、もうちょっと待てるか?」
<ジジイは暇じゃからゆっくりでええぞ。人間と話すのも面白いわい>
<我も待てるぞ>
「張り合うなよ」
苦笑しながらダイトの背中を撫でてみんなの後を追うと、立派な花壇の中心に家があった。
マトリアさんは指でついてこいと指示し、家の中へ。
ちなみにソリッド様は他国の事情に関われないからとトラックで寝ていたりする。おいてくれば良かった。
「ふうん、ドラゴンだけじゃなくベヒーモスもかい。面白いヤツだねえホント」
「ん?」
「なんでもない、こっちだよ」
さて、そんな一軒家にはいると普通のリビングにキッチンがあり、ぞろぞろと中へ入っていくとリビングのソファで寝転がっている爺さんがこちらに気づいた。
「お? どうしたマトリア、客か?」
「昼間っからゴロゴロしてんじゃないよ、たまには剣を振ったらどうだい」
「固いこと言うなよ、今日は休日だ」
「あんたは毎日が休日だろ? 紹介するよ、こいつは私の旦那だ」
タンクトップのおっさんがシュタっとソファから立ち上がると190cmくらいはある体を震わせて笑う。
「はっはっは、俺の名はデイルってんだ。よろしくな」
「ヒサトラです」
「サ、サリアです」
<きゅん!>
銀髪をオールバックにした大男は手もでかかった。サリアがびっくりし、物怖じしないアロンが一声鳴くと、頭に手を置いてから言う。
「おう、変わった犬だな?」
「それはベヒーモスの子だよ。あんたの好きそうなのが庭に居るから行って来な」
「なんだ? じゃあちょっと出てくるわ、ゆっくりしていきなよ兄ちゃんたち!」
「……慌ただしいな」
「爺さんが居るとうるさいからね、ベヒーモスとシルバードラゴンならちょうどいいよ」
酷い。
挨拶もそこそこに飛び出していったデイルさんをよそに俺達はマトリアさんについていくと地下室へと案内される。アリーが見た図鑑というのもここにあったものだそうだ。アリアの花を教えてもらった時はまだここに戻れるとは思っていなかったため、ぬか喜びはさせたくないと曖昧にしていたらしい。
「久しぶりなんですよ私も」
「小さい頃はよくこっちにいたもんだけど、学校に行き出してからはさっぱりだったからね」
くっくと笑いながら地下室の灯りをつけると――
「わあ……」
「凄いな……!?」
――部屋にびっしりと本が詰まっていた。魔法使いの名に相応しいと感心するくらいには多い。
「まあ、魔法使いはこれくらい持っているもんさ。最近は魔道具が流行りだしたから魔法の修行をする人間も冒険者くらいになったがね」
少し残念そうな声色でそう言った後、さっそく本題に入る。
俺達はその辺の床に座り、聞く態勢を整えるとマトリアさんは本を片手に口を開く。
「さて……お主の探している万病治療薬の名は‟オポロミオ”と言ってな、伝承ではあらゆる病に聞いたと記されている」
「胡散臭い」
「くく、まったくじゃな。どの程度かという記述については不治の病が治ったくらいしか書かれておらん。だが、こうやって残っている限り信憑性はあるじゃろ」
「まあ、ルアンが『ある』と言っていた以上なにかしらはあるだろうし……それがそのオポビタンであって欲しいって感じだな」
「ヒサトラさんオポメミンですよ」
「オポロミオじゃ」
栄養ドリンクみたいな名前や信憑性はどうでもいいとして、手に入れられるものは手に入れておくべきだろう。
「まあそのあたりのことはどうでもいい。材料のことを聞かせてくれ」
「とりあえずアリアの花とデッドリーベアの蜜は聞いていますけど」
「そうだね、で、竜の牙は手に入れられるから除外しようか」
「あ、それで少し揃っているって言ってたのか」
頷くマトリアさん。
そこからは微妙に手に入れにくそうなものが羅列される。
材料は……
・アリアの花
・デッドリーベアの蜜
・ドラゴンの牙
・ジュエリーサンゴ
・レッドスライムのしぼり汁
・ロックウォールナッツ
・マンドラゴラの根っこ
この七つだ。
とりあえず上三つは終わっているが残り四つ。すぐに手に入るものなのか?
「ジュエリーサンゴはまあ漁師に頼めば出てくるじゃろ。お高いかもしれんがな。ロックウォールナッツは中身を取り出すのが面倒くさいわい。レッドスライムは湿地帯にいけばなんぼでもおるが、生け捕りが難しい」
「マンドラゴラは? こいつ、抜いたら叫ぶとか聞いたことがあるけど」
「ああ、そいつは楽じゃ。抜く前に土の中で黙らせてしまえばええ」
麻痺させるとか口がある辺りをあらかじめ塞いでおくらしい。そんな方法があるとは……
とりあえず面倒そうだが目標があるのはありがたいな。