というわけでやってきたのはドラゴンの棲む山である『リキトウ(さん)』。
 強そうな名前でいかにも居そうな感じがする。
 国に入ってから南に50kmほどの場所に位置するこの山は悪路だった。一応、冒険者達も狩りに利用するため道が無いわけではないんだけど、まあ獣道って感じだ。

 2NDに切り替え、ディーゼルエンジンの底力を見せつけ急こう配を登っていくと、騎士達がやんややんやと喝采していた。
 ダイトはコンテナから降りてトラックの前を歩いてくれており、魔物に対しての牽制と万が一ドラゴンに遭遇した場合に話をしてもらうようにしている。

「っと、そろそろ中腹だな。これ以上は流石にトラックじゃ無理だ」
「道も無くなっちゃいましたしね」
<わふ>

 ちょうど転回できそうな場所があったので下山準備をしてトラックから一旦降りる。
 ここからはダイトの背中に乗ってドラゴンの巣に行く必要がある。

「ソリッド様は残っていてくださいよ? 流石にドラゴン相手は騎士達も危ないでしょうし」
「まあ勝てなくはないっすけどね、多分? でも、鱗を拾ってくるだけなら待ちますよ。ベヒーモスの旦那が居れば大事にはならないっす。後、アイオライトを殴って壊せるヒサトラさんなら余裕っすね」
「まあそうだな」

 ソリッド様は聞き入れてくれて冒険者3人組と俺、サリアにアロンという組み合わせでさらに登っていく。
 ここもアノクタラ山脈と同じで標高が高く、最長で2000mはあるようだ。山脈は3000m級で1700mくらいでアリアの花を見つけた。

「ここは火山じゃないのか」
「普通の山ですね。火山はもっと南に行かないとないんですよ」
「ドラゴンが棲むくらいだからそうだと思ってた」
<ドラゴンも暑い場所を好むやつはそう多くないぞ?>

 意外である。
 火を吐くから平気かと思っていたが、そうでもないらしいや。
 そんなどうでもいい会話をしながら山の7割くらいを登ったところで目的の場所へ到着した。

「……あれが巣か。ここは想像通りなんだな」
<まあ、我もそうだが最強種と言っても生き物に変わりはないから他の動物と似ているところもある。というかあやつは――>
「ダイトさん、隠れられていないですよ」
<……きゅん>
<む、そうか>

 岩陰からこっそり覗くと銀色の鱗をし、体を丸めたドラゴンが鼻提灯を浮かべて寝ているのが見えた。木々を集めて作った巣には卵と鱗が落ちていて、これは絶好の機会だ。

「よし、アリー。お前の勇姿はしっかり残しておくから行ってこい。ビリー達は手伝えるんだよな?」
「はい! その魔道具があればあのドラ息子達にぐうの音も出ないくらいの証拠を突き付けられます!」
「行こうアリー、ジミー兄さん」

 そう言ってそろりと足を忍ばせて近づいていく3人。
 鱗は落ちているものの、巣の中にあるのでそれなりにハードルは高いので見ている俺達もドキドキである。
 ちなみにアリーが言っていた魔道具は俺のスマホで、動画の録画機能のことである。
 一度試しに撮ってみたので存在を知っている訳だな。

 まあ、現地で取って来たかどうかなんてのは監視役もいないし分からないと思うのだが、そこは嘘を吐きたくないと自身で行った。ちなみに鱗自体高価なので買ってもいいらしい。
 何故か? 基本生活費しか渡されないのでそれだけ稼ぐ力がある、もしくはドラゴンの巣へ向かってくれる冒険者を雇えるという『財力』を認めてもらえるんだと。

 流石に1年やそこらでそんな大金は用意できなかったのでこれがラストチャンスというわけ。
 
「頑張ってください……!!」
<わふ……!!>

 上手いこと鱗を三枚拾うのが見えて歓喜の笑みを浮かべるアリー。
 だが、そこで変な虫がドラゴンの鼻提灯に近づいていく。

「あ、まずい!? 早く戻れ!」
「は、はい」

 小声で注意喚起をするが遅かった……虫により鼻提灯が今、割られたのだ――

<んあ……? おっと、いかんいかんうっかり昼寝を……な!? 人間だと!>
「わあああ!? 起きた!!」
「急げ!」
<ぬう、岩陰にもいるのか? なにをしに来たのか知らんが、我がテリトリーに入ってきたこと、後悔するがいい!>
「うるさっ!?」

 鋭い咆哮を上げるドラゴンにアリー達が耳を抑えてしゃがみ込む。ここにいる俺達でもうるさいと感じるので近いあいつらはさらにキツイはずだ。
 このままでは殺られると、俺はダイトの背を叩いて踊り出る。

「こっちにも居るぜ!」
<む! そっちにも! って、貴様――>
 
 銀色のドラゴンの気を逸らすため、ダイトの背に乗ってバットを振って威嚇する俺。
 首をこちらにもたげて目を見開いたドラゴンは驚いたように口を開く。

<貴様……ベヒーモスではないか! おお、元気そうだな!>
<やはりシルバードラゴン、お前だったか。呑気に寝ておるからそうではないかと思ったわ。だから卵を盗まれるんだぞ?>
<ぬっはっは! 無精卵などくれてやっても構わんわい。有精卵ならかみ殺してやるがな? しかし……人間と一緒とはどういう風の吹き回しだ?>
「……随分親しげだな……ダイト、知り合いか?」

 俺以外のみんなも驚いた顔をして両者を見比べていた。
 すると、ダイトがドヤ顔で言う。

<うむ、この山を見てもしやと思ったがこいつは我の旧知の間柄であるシルバードラゴンだ>
「知り合い……」

 どうやら最強種同士、世間は狭いってことらしい。
 だけどシルバードラゴンが俺達を見て目を細める――