「へえー、南の国のねえ」
「はい。私はローデリア王国の貴族の一人でアリー=ホーランドと言います。この二人は私が試練を突破するためについてきてくれた者です」
「そっちの領主も大変だな。女性が領主になることが無いわけではないが珍しいな? いや、これ美味いな……!?」
湯上り。
お歳暮の中にあった冷えたフルーツジュースを飲みながら外でそんな話をしていた。
そこで判明した事実だが、なんとアリーは領主の娘で、父親が病に臥せっているにも関わらず次期領主争いの真っ最中だとのことだ。アリーには兄弟がおらず、従兄弟と結婚を迫られているらしい。
「あの男と結婚するのは嫌なんです……だけど弱っている父を叔父が言いくるめようとしていまして……。先にお話しした通り試練をクリアしなければ家を継げません。女である私がそれは無理だろうと」
どうも叔父もその息子も金目当てであまりいい性格をしているわけではないらしく、可愛い顔立ちのアリーだが顔が歪んでいた。怖い。
まあ、そんなわけで一年かけて試練をクリアすれば家を継ぎ、好きな男と結婚できるという条件に臨んだってわけだ。
「その条件がドラゴンの鱗を手に入れること、か」
「はい。ローデリアにある山に棲む赤い竜の鱗を手に入れる……それが代々伝わる試練なんです。父もやりましたし、部屋に飾られていますよ」
「それで力をつけるために冒険者としてやっているのですが、残り二か月となってしまい達成できそうにありません。ですが、一枚でも奪って逃げきれればと思い、こうしてご相談させていただきました」
ビリーが難しい顔で首を振る。アリーはその叔父息子との結婚は回避したいらしい。そこでサリアとリーザ様が拳を握って俺に声をかける。
「話を聞きましたがセクハラをする金に汚いクソ野郎みたいです! アリーのためにもここは力を貸しましょう!」
「そうですわ! 好きな人と結婚できないなんて許せません!」
「お、おう」
<わん>
事情は分かったが、もうひとつ気になることがあるのでそっちについて聞いてみることにする。
「まあ、協力するのは次の休みなら構わないが……親父さん病気なんだろ? アリアの花を欲しがったのは回復も視野に入れているからじゃないのか?」
「……はい。利用したことは謝ります……」
「あ、いや、そうじゃねえんだ、ウチも母ちゃんの病気を治すため調査している訳だし、ついでに親父さんの分も手に入れておいた方がいいんじゃねえかなって」
「さすがヒサトラさん! 私もそう思ってました!」
「うわ!? よせって!?」
サリアが歓喜の声を上げて抱き着いてきたので慌てて受け止める。サリアを抱っこしままアリーに目配せをすると、今まで緊張があったのだろう。一筋の涙が流れていた。
「ありがとう……ございます……」
「なあに、俺もこの世界に来てかなりみんなに世話になってるからな」
ということで次はドラゴンの鱗をゲットし、継承できるようになったら次に治療薬の材料集めをすることを目標に行動しようということになった。
「別の国の事情ですが大丈夫なんですか?」
「ん? 別に構わないぞ? 他国だろうが人は人。協力し合うのが当然だろう」
それが出来ない人間が国を預かると戦争を起こすのだと、珍しく真面目な顔で度量の高いことを口にし、騎士達から拍手が沸き起こっていた。
しかし――
「……ゴルフはお預けか」
やはりそこはソリッド様だったとさ。
◆ ◇ ◆
そして温泉を堪能してすぐに王都へ戻ると、翌日からの仕事に備えて素早く飯を食って就寝。
アリー達はどうするのかと言えば、ドラゴンのところへ行くまで仕事を手伝ってくれるとのことで、一緒に宅配をして回ることになった。
まさかこんなことになるとは思わなかったが持ちつ持たれつだと思うので、出来る限り協力はしたいと考えている。特にドラゴンとなればベヒーモスであるダイトの力が必要になるかもしれないしな。
<ふあ……>
<きゅーん……>
庭先であくびをする親子は特にドラゴンと聞いても特に気にしていないが、勝てるのだろうか? 一応、最強種だし戦ったこともありそうだ。
そこから五日ほど宅配に従事し、アリー達が居ても特に問題なく仕事が終わる。
五人で生活しているとそれはそれで楽しかった。
ビリー・ジミーは兄弟で、ビリーの方がアリーの恋人なんだと。で、そのアリーはお嬢様らしく料理がまったくできないというのがそれっぽくて面白かったな。
ビリーと結婚させるためにも頑張ってやらないとな。
祖母はまだ生きているらしいが、達成するまでは家に戻れないそうなので俺の目的を果たすためにもここは一肌脱がねばならないのだ。
そして休日、俺達はローデリア国に入ることになるのだが……
「ちょ、なんだこれは!?」
「トラックという乗り物だ。私はソリッド、ビルシュ国の王をやっている」
「ビルシュ国王様!? それに上に乗っているのは……」
「ベヒーモスだ。急で悪いがドラゴンの棲む山へ行かせてもらうぞ」
「あ、はい……お通り、ください……ええー……」
なんとソリッド様もついてきていたりする。
トラックが怪しまれれば先に進めないだろうということで、ビルシュ国側の騎士達と国境警備兵が証人としてついてきたというわけだ。いや、いいのかマジで?
「い、いいんでしょうか……」
「まあソリッド様には逆らえないしなあ……」
「早く終わらせてゴルフとやらをやるのだ! ヒサトラ君頼むぞ!」
「ま、早く終わらせるのは同意しますよ。……んじゃ行きますか!」
「はい。私はローデリア王国の貴族の一人でアリー=ホーランドと言います。この二人は私が試練を突破するためについてきてくれた者です」
「そっちの領主も大変だな。女性が領主になることが無いわけではないが珍しいな? いや、これ美味いな……!?」
湯上り。
お歳暮の中にあった冷えたフルーツジュースを飲みながら外でそんな話をしていた。
そこで判明した事実だが、なんとアリーは領主の娘で、父親が病に臥せっているにも関わらず次期領主争いの真っ最中だとのことだ。アリーには兄弟がおらず、従兄弟と結婚を迫られているらしい。
「あの男と結婚するのは嫌なんです……だけど弱っている父を叔父が言いくるめようとしていまして……。先にお話しした通り試練をクリアしなければ家を継げません。女である私がそれは無理だろうと」
どうも叔父もその息子も金目当てであまりいい性格をしているわけではないらしく、可愛い顔立ちのアリーだが顔が歪んでいた。怖い。
まあ、そんなわけで一年かけて試練をクリアすれば家を継ぎ、好きな男と結婚できるという条件に臨んだってわけだ。
「その条件がドラゴンの鱗を手に入れること、か」
「はい。ローデリアにある山に棲む赤い竜の鱗を手に入れる……それが代々伝わる試練なんです。父もやりましたし、部屋に飾られていますよ」
「それで力をつけるために冒険者としてやっているのですが、残り二か月となってしまい達成できそうにありません。ですが、一枚でも奪って逃げきれればと思い、こうしてご相談させていただきました」
ビリーが難しい顔で首を振る。アリーはその叔父息子との結婚は回避したいらしい。そこでサリアとリーザ様が拳を握って俺に声をかける。
「話を聞きましたがセクハラをする金に汚いクソ野郎みたいです! アリーのためにもここは力を貸しましょう!」
「そうですわ! 好きな人と結婚できないなんて許せません!」
「お、おう」
<わん>
事情は分かったが、もうひとつ気になることがあるのでそっちについて聞いてみることにする。
「まあ、協力するのは次の休みなら構わないが……親父さん病気なんだろ? アリアの花を欲しがったのは回復も視野に入れているからじゃないのか?」
「……はい。利用したことは謝ります……」
「あ、いや、そうじゃねえんだ、ウチも母ちゃんの病気を治すため調査している訳だし、ついでに親父さんの分も手に入れておいた方がいいんじゃねえかなって」
「さすがヒサトラさん! 私もそう思ってました!」
「うわ!? よせって!?」
サリアが歓喜の声を上げて抱き着いてきたので慌てて受け止める。サリアを抱っこしままアリーに目配せをすると、今まで緊張があったのだろう。一筋の涙が流れていた。
「ありがとう……ございます……」
「なあに、俺もこの世界に来てかなりみんなに世話になってるからな」
ということで次はドラゴンの鱗をゲットし、継承できるようになったら次に治療薬の材料集めをすることを目標に行動しようということになった。
「別の国の事情ですが大丈夫なんですか?」
「ん? 別に構わないぞ? 他国だろうが人は人。協力し合うのが当然だろう」
それが出来ない人間が国を預かると戦争を起こすのだと、珍しく真面目な顔で度量の高いことを口にし、騎士達から拍手が沸き起こっていた。
しかし――
「……ゴルフはお預けか」
やはりそこはソリッド様だったとさ。
◆ ◇ ◆
そして温泉を堪能してすぐに王都へ戻ると、翌日からの仕事に備えて素早く飯を食って就寝。
アリー達はどうするのかと言えば、ドラゴンのところへ行くまで仕事を手伝ってくれるとのことで、一緒に宅配をして回ることになった。
まさかこんなことになるとは思わなかったが持ちつ持たれつだと思うので、出来る限り協力はしたいと考えている。特にドラゴンとなればベヒーモスであるダイトの力が必要になるかもしれないしな。
<ふあ……>
<きゅーん……>
庭先であくびをする親子は特にドラゴンと聞いても特に気にしていないが、勝てるのだろうか? 一応、最強種だし戦ったこともありそうだ。
そこから五日ほど宅配に従事し、アリー達が居ても特に問題なく仕事が終わる。
五人で生活しているとそれはそれで楽しかった。
ビリー・ジミーは兄弟で、ビリーの方がアリーの恋人なんだと。で、そのアリーはお嬢様らしく料理がまったくできないというのがそれっぽくて面白かったな。
ビリーと結婚させるためにも頑張ってやらないとな。
祖母はまだ生きているらしいが、達成するまでは家に戻れないそうなので俺の目的を果たすためにもここは一肌脱がねばならないのだ。
そして休日、俺達はローデリア国に入ることになるのだが……
「ちょ、なんだこれは!?」
「トラックという乗り物だ。私はソリッド、ビルシュ国の王をやっている」
「ビルシュ国王様!? それに上に乗っているのは……」
「ベヒーモスだ。急で悪いがドラゴンの棲む山へ行かせてもらうぞ」
「あ、はい……お通り、ください……ええー……」
なんとソリッド様もついてきていたりする。
トラックが怪しまれれば先に進めないだろうということで、ビルシュ国側の騎士達と国境警備兵が証人としてついてきたというわけだ。いや、いいのかマジで?
「い、いいんでしょうか……」
「まあソリッド様には逆らえないしなあ……」
「早く終わらせてゴルフとやらをやるのだ! ヒサトラ君頼むぞ!」
「ま、早く終わらせるのは同意しますよ。……んじゃ行きますか!」