「えっと、倉庫は魔法鍵でかけられるのか」
「ええ、それに耐火・防犯・極大魔法でも壊せない防御魔法がかかってるみたいです」
「どこの防衛拠点だ」
そんな昼下がり。
トラックが町から町へ移動するという認識が広がるまでしばらく待たないといけないわけだが、その間は割と暇である。
荷ほどきはそれなりに終わり、今は店舗兼倉庫で物品の確認をしていたところだ。
まだ向こうの世界からの積み荷の開封は終わっていない。飲み物はそろそろ尽きそうだが、トランポリンや戦隊ものの武器、リーザ様が気に入っているダイエットバイクなど、形として残るものは結構ありがたい。
もう戻れないが向こうとの繋がりが感じられるからな。
で、とりあえずノートパソコンとプリンタも出てきたので今はそいつをなんとか使えないか四苦八苦している。
まあ、コンセントの問題が解決しないと使えないんだよなあ……
「そろそろお茶にしましょうか」
「あ、そうするか。んー……座りっぱなしはよくねえな……」
庭のテーブルセットでのんびりしようかと思って外に出ると、
「おお、ヒサトラ殿! ちょうど良かった!」
「あ、ソリッド様の親衛隊さん。どうしたんです……か?」
外でばったり出会ったのはソリッド様を護衛する親衛隊の一人だった。
どうでもいい話だがあのコンテナに乗ってはしゃいでいた騎士達は精鋭らしい。マジで? とも思うが、実際に戦いになると腕は確かなんだとか。
いや、それよりも、だ。
「……その台車のダンボールは?」
「……」
「答えろよ!?」
「ふふふ、私だヒサトラ君」
「はい」
「怯みもしないだと……!」
台車のダンボールから足が生え、箱を取り去ったところでソリッド様が現れた。にやりと俺に笑いかけるが、別に分かっていたことなので驚く必要もないし適当に答えておく。
「うぬ……城のメイドにはウケていたのに……」
「別に珍しくないですからねその組み合わせ。それでどうしたんです?」
「あ、いらっしゃいませソリッド様。騎士さんも! お茶をもってきますー」
サリアがもう一度家に戻るのを尻目に俺達はテーブルに座り向かい合う。
すると、ソリッド様がどこかの指令ポーズになり俺に目を向けると早速本題に入ってくれた。
「……依頼を受けてくれないか?」
「え? まだ各町に通達はいってないから無理では?」
というか昨日の今日なので絶対に不可能だ。しかし、当然というかそれでいいのかということを口にする。
「私も一緒なら問題ない。それに、テストケースとして訪問するのも悪くないだろう」
「本音は?」
「魚が食べたい」
「なるほど」
欲と興味が原動力だった。ま、そこは別にいいんだけどな、暇をしているし。
それに国王陛下自ら町へ行くとなればトラックに対する信頼度も厚くなるかもしれない。
「城を空けていいんですか?」
「息子と娘が居るから心配はいらない。さ、善は急げだ、お茶をいただいたら行こうでは無いか!」
「お待たせしました」
「これは良いお茶ですね」
相変わらずどこからともなく現れる毒見役がお茶の半分ほどを飲み干している。俺がそれを尻目にしている中、予定を決めるソリッド様。言われてみれば子供がいてもおかしくない年齢のはずだ。子供も成人は越えてそうだから少しくらいならいいのかも。
「とりあえず俺達は問題ないですよ。リーザ様はどうしますか? 息子さん達は知っているんでしょうね? ……露骨に目を逸らさないでください」
「言ってないんですか?」
サリアも着席して尋ねると、リーザ様には黙って出て来たらしい。
ちなみにダンボールからの登場でまったく驚かなかったのでガッカリしてここへ来たというわけだ。
「後でなに言われても知りませんからね……? それじゃ戸締りをして出発するか」
するとそこで、
「ああ、見つけましたわ」
「おうリーザ!? なぜここに!?」
俺達がお茶を飲み干して席を立つと、ちょうどリーザ様がお供の騎士を連れて馬車でやってきた。そして彼女は少しむくれてから口を開く。
「騎士に聞いたら教えてくれましたわよ? 行くなら一言ほしかったです」
「うむ……」
美人な奥さんには頭が上がらないようで口を尖らせてから一言、うめくように呟いた。今回はしょうもない理由でハブろうとしたのでソリッド様が悪い。
「ふう、できればここへはご一緒したいんですから今度からはちゃんと声をかけてくださいね。というわけでヒサトラさん、あのダイエットのやつを使いたいのだけど、いいかしら?」
「あー、今からお出かけするんですよ。ソリッド様が魚を食べたいらしくて」
「まあ、それはいいですわね! もちろんわたくしも行きますわ」
「そうだな。一緒に美味い魚を食べようかリーザ」
「あなた……」
二人の空間を作り始めたので俺が咳ばらいをすると、二人はサッと離れて顔を赤くしていた。
とりあえず準備のためコンテナの片方を開けてから騎士達が乗れるようにソファを固定。さらに落ちないよう鉄柵を立てて設置。
向こうの世界なら一発免停間違いなしのデコトラが完成すると、いつの間にか並んでいた騎士達が乗り込んできた。
「景色がいいんだよな」
「俺、初めてだから前にしてくれよ」
「鉄柵を掴むなよ、落ちるからな」
「仲いいなこいつら……」
「ヒサトラさん、仲間同士の絆が大切ってギルドで言ってたじゃないですか」
「ま、確かに。それじゃ、ちょっと暇つぶしに行きましょうかね!」
助手席にソリッド様とリーザ様を乗せ、サリアを寝台といういつものポジションに収まると、トラックを回して出発する。魚か……刺身かフライが食いてえな
氷の魔道具があるから凍らせて持って帰るのもアリだな……
「ええ、それに耐火・防犯・極大魔法でも壊せない防御魔法がかかってるみたいです」
「どこの防衛拠点だ」
そんな昼下がり。
トラックが町から町へ移動するという認識が広がるまでしばらく待たないといけないわけだが、その間は割と暇である。
荷ほどきはそれなりに終わり、今は店舗兼倉庫で物品の確認をしていたところだ。
まだ向こうの世界からの積み荷の開封は終わっていない。飲み物はそろそろ尽きそうだが、トランポリンや戦隊ものの武器、リーザ様が気に入っているダイエットバイクなど、形として残るものは結構ありがたい。
もう戻れないが向こうとの繋がりが感じられるからな。
で、とりあえずノートパソコンとプリンタも出てきたので今はそいつをなんとか使えないか四苦八苦している。
まあ、コンセントの問題が解決しないと使えないんだよなあ……
「そろそろお茶にしましょうか」
「あ、そうするか。んー……座りっぱなしはよくねえな……」
庭のテーブルセットでのんびりしようかと思って外に出ると、
「おお、ヒサトラ殿! ちょうど良かった!」
「あ、ソリッド様の親衛隊さん。どうしたんです……か?」
外でばったり出会ったのはソリッド様を護衛する親衛隊の一人だった。
どうでもいい話だがあのコンテナに乗ってはしゃいでいた騎士達は精鋭らしい。マジで? とも思うが、実際に戦いになると腕は確かなんだとか。
いや、それよりも、だ。
「……その台車のダンボールは?」
「……」
「答えろよ!?」
「ふふふ、私だヒサトラ君」
「はい」
「怯みもしないだと……!」
台車のダンボールから足が生え、箱を取り去ったところでソリッド様が現れた。にやりと俺に笑いかけるが、別に分かっていたことなので驚く必要もないし適当に答えておく。
「うぬ……城のメイドにはウケていたのに……」
「別に珍しくないですからねその組み合わせ。それでどうしたんです?」
「あ、いらっしゃいませソリッド様。騎士さんも! お茶をもってきますー」
サリアがもう一度家に戻るのを尻目に俺達はテーブルに座り向かい合う。
すると、ソリッド様がどこかの指令ポーズになり俺に目を向けると早速本題に入ってくれた。
「……依頼を受けてくれないか?」
「え? まだ各町に通達はいってないから無理では?」
というか昨日の今日なので絶対に不可能だ。しかし、当然というかそれでいいのかということを口にする。
「私も一緒なら問題ない。それに、テストケースとして訪問するのも悪くないだろう」
「本音は?」
「魚が食べたい」
「なるほど」
欲と興味が原動力だった。ま、そこは別にいいんだけどな、暇をしているし。
それに国王陛下自ら町へ行くとなればトラックに対する信頼度も厚くなるかもしれない。
「城を空けていいんですか?」
「息子と娘が居るから心配はいらない。さ、善は急げだ、お茶をいただいたら行こうでは無いか!」
「お待たせしました」
「これは良いお茶ですね」
相変わらずどこからともなく現れる毒見役がお茶の半分ほどを飲み干している。俺がそれを尻目にしている中、予定を決めるソリッド様。言われてみれば子供がいてもおかしくない年齢のはずだ。子供も成人は越えてそうだから少しくらいならいいのかも。
「とりあえず俺達は問題ないですよ。リーザ様はどうしますか? 息子さん達は知っているんでしょうね? ……露骨に目を逸らさないでください」
「言ってないんですか?」
サリアも着席して尋ねると、リーザ様には黙って出て来たらしい。
ちなみにダンボールからの登場でまったく驚かなかったのでガッカリしてここへ来たというわけだ。
「後でなに言われても知りませんからね……? それじゃ戸締りをして出発するか」
するとそこで、
「ああ、見つけましたわ」
「おうリーザ!? なぜここに!?」
俺達がお茶を飲み干して席を立つと、ちょうどリーザ様がお供の騎士を連れて馬車でやってきた。そして彼女は少しむくれてから口を開く。
「騎士に聞いたら教えてくれましたわよ? 行くなら一言ほしかったです」
「うむ……」
美人な奥さんには頭が上がらないようで口を尖らせてから一言、うめくように呟いた。今回はしょうもない理由でハブろうとしたのでソリッド様が悪い。
「ふう、できればここへはご一緒したいんですから今度からはちゃんと声をかけてくださいね。というわけでヒサトラさん、あのダイエットのやつを使いたいのだけど、いいかしら?」
「あー、今からお出かけするんですよ。ソリッド様が魚を食べたいらしくて」
「まあ、それはいいですわね! もちろんわたくしも行きますわ」
「そうだな。一緒に美味い魚を食べようかリーザ」
「あなた……」
二人の空間を作り始めたので俺が咳ばらいをすると、二人はサッと離れて顔を赤くしていた。
とりあえず準備のためコンテナの片方を開けてから騎士達が乗れるようにソファを固定。さらに落ちないよう鉄柵を立てて設置。
向こうの世界なら一発免停間違いなしのデコトラが完成すると、いつの間にか並んでいた騎士達が乗り込んできた。
「景色がいいんだよな」
「俺、初めてだから前にしてくれよ」
「鉄柵を掴むなよ、落ちるからな」
「仲いいなこいつら……」
「ヒサトラさん、仲間同士の絆が大切ってギルドで言ってたじゃないですか」
「ま、確かに。それじゃ、ちょっと暇つぶしに行きましょうかね!」
助手席にソリッド様とリーザ様を乗せ、サリアを寝台といういつものポジションに収まると、トラックを回して出発する。魚か……刺身かフライが食いてえな
氷の魔道具があるから凍らせて持って帰るのもアリだな……