「あ、あわわ……」
「オ、オリハルコンが……!?」
「オリハルコンって……めちゃくちゃ高い金属じゃねえか!?」
「ええ、金貨でだいたい千枚くらいの価値ですね」
一千万円……!?
やべえ、さすがにこの金額は持ってないぞ……べ、弁償しないといけねえけど……。
「というかなんでこんなところに……」
「よくお二人が喧嘩した時に八つ当たりをするため、壊れないものを置いているんですよ」
「常駐!?」
しかし、これがどういう意図のものであれぶっ壊したのは俺だ。固まっているペールセンさんに目を向けて口を開く。
「ついカッとなってやっちまった。硬そうだったからバットで威嚇したが、まさか割れるとは。弁償は必ずする、だからしばらく待っちゃくれねえか?」
俺がそう言って頭を下げるがざわめきが止まらない。そりゃ高価な道具を破壊したから当然だろう。
しかし――
「も、もう喧嘩はしません……」
「お、俺も悪かったんだぜ……」
――ギルドマスター二人は何故かテーブルに手をついて俺に謝ってきた。
で、ざわついている奴らの声に耳を傾けてみるとだ。
「いやいやいや、有り得ねえだろ!?」
「し、しかし現に真っ二つに割れたぞ……」
「偽物を掴まされたんじゃねえの?」
「いや、目利きに関して商人がミスるとも思えん……」
「異世界人、恐るべし……」
「魔王を倒したのも異世界人だし、やっぱなんかあるのかねえ」
さっきまで喧嘩していた二つのギルドメンバー達が驚愕と興味が入り混じった感じで話していた。
頭を下げられた俺も困惑を隠せないが、ギルドマスター二人をこのままにしておくわけにも行くまい……。
「あ、あー、ファルケンさんにペールセンさん。頭を上げてください、これからみんなで仲良くやっていけばいいじゃないですか。俺も悪かったですし、冒険者も商工会も悪かった。痛み分けってことで」
「う、うむ……そうだな」
「仕方ねえ、今までのことは水に流そうじゃねえか……」
ぼそりと『オリハルコンを破壊するようなのと敵対しちゃいけねえ』みたいなのを呟いていた気がするがスルーしておこう。
とりあえず場の空気が緩和し、それぞれメンバーが散ると元に戻ったペールセンさんがため息を吐きながら口を開く。
「それにしても驚いた」
「いや、すんませんホント……」
「構わん。どうせ素材として手に入れたものだから、壊れても片方だけ売れると思えばむしろありがたい。しかしバット、というのか? 凄い武器だな」
「ああ、これは武器じゃないんですよ。異世界の遊具で、本当の使い方はこう振りかぶって球を打つってね」
「それは興味深いな。というかそんなので壊したのか……」
ペールセンさんが冷や汗を流していると、それまで黙っていたサリアがにこにこしながら口を開く。
「そうですねえ、恐らくヒサトラさんには女神さまの加護があるからだと思いますよ。この世界へは女神ルアン様のお導きだからですね」
「おお、なんとルアン様の!? そうか、それなら納得がいく。ではイヴリース教が喜ぶんじゃないか」
「イヴリース教?」
聞きなれない単語が出て来たのでオウム返しをすると、サリアが説明をし始める。
どうやら俺に話したいことでもあったらしい。
「イヴリース教は女神ルアン様を崇拝する宗教で、各地に教会を持っているんです。ヒサトラさんは実際に女神様から声を聞いてここへ来ているので、助けを得ることは難しくないかと。お母様の薬も見つけやすいと考えています」
「おお……」
「どういうことかね?」
このタイミングで話をしたのは、王都というでかい町であることに加えて両ギルドマスターが揃っていたからということらしい。
元々、今日の内に挨拶をした後、どっちか経由で二人と顔を合わせてこの話をしたかったらしい。
確かに各地に同一組織があるなら情報交換は容易いか。ポンコツでなければ。
で、母ちゃんの話をすると、ペールセンさん以下、商人たちがすすり泣く。
「ふぐ……そういうことが……喧嘩なんぞしとる場合じゃないわ! よし、皆のもの、治療薬についての情報も収集するよう努めるのだ」
「「「おお!!」」
「良かったですね♪」
「ああ、まあそうだが……いいのか?」
盛り上がる中、昼間なのに酒盛りが始まり、俺は困惑しながら頬を掻く。
するとファルケンさんが俺の肩に手を置いて大声で笑いながら言う。
「がっはっは! こまけえこたあいいんだよ! 後で俺とペールセンとイヴリース教へ顔を出して話をしといてやる。後で使者が行くかもしれねえからそん時はよろしくな」
「あ、ああ」
「よーしそれじゃヒサトラ殿とサリアさんの歓迎会だ! 酒を回せえええ!」
「ちわー! オードブルもってきやした!!」
「対応が早い!?」
「ソリッド様達が頼んでくれたところと同じみたいですね」
◆ ◇ ◆
――とまあそんな感じで俺の攻撃力がとんでもないことにより、冒険者ギルドと商工会ギルドは仲直りしたらしい。
今日はどんちゃん騒ぎをしたが、翌日からは通常営業。
商人も冒険者も当日は本当に俺達を歓迎をしたかったんだなと思うくらい、各ギルドは人が出払っていて居なかったのだ。みんないい奴等だし、仕事に誇りをもっているのだろう。
で、運送業についての取り決めをしようとなったのだが、ソリッド様が居る時に頼むと言われていた。なので俺とサリア、ペールセンさんとファルケンさんが登城。
基本的にギルドを介さずにウチの店舗に荷物の持ち込みや移動の依頼をしてもらう形は今まで通り。ロティリア領でやっていたことを踏襲した。ギルドでやってもらうことは宣伝が主になりそうだ。
しかしこれだとギルドの旨味が少ないので、一般の人が移動するよりも冒険者と商人はギルド証を見せてくれればわずかだが料金を安くすることで決定した。
他にもなにかあれば考慮するということでまとまり、細かい町での運用等を決め、各領地と町へ通達してくれるそうである。
「それでは全てが決まるまで十日ほどかかるだろう。それまでゆっくりするといい」
「ありがとうございます!」
それから仕事か、楽しみだな。
……とか思っていると、翌日、台車にダンボールを乗せた騎士がやって来た――
「オ、オリハルコンが……!?」
「オリハルコンって……めちゃくちゃ高い金属じゃねえか!?」
「ええ、金貨でだいたい千枚くらいの価値ですね」
一千万円……!?
やべえ、さすがにこの金額は持ってないぞ……べ、弁償しないといけねえけど……。
「というかなんでこんなところに……」
「よくお二人が喧嘩した時に八つ当たりをするため、壊れないものを置いているんですよ」
「常駐!?」
しかし、これがどういう意図のものであれぶっ壊したのは俺だ。固まっているペールセンさんに目を向けて口を開く。
「ついカッとなってやっちまった。硬そうだったからバットで威嚇したが、まさか割れるとは。弁償は必ずする、だからしばらく待っちゃくれねえか?」
俺がそう言って頭を下げるがざわめきが止まらない。そりゃ高価な道具を破壊したから当然だろう。
しかし――
「も、もう喧嘩はしません……」
「お、俺も悪かったんだぜ……」
――ギルドマスター二人は何故かテーブルに手をついて俺に謝ってきた。
で、ざわついている奴らの声に耳を傾けてみるとだ。
「いやいやいや、有り得ねえだろ!?」
「し、しかし現に真っ二つに割れたぞ……」
「偽物を掴まされたんじゃねえの?」
「いや、目利きに関して商人がミスるとも思えん……」
「異世界人、恐るべし……」
「魔王を倒したのも異世界人だし、やっぱなんかあるのかねえ」
さっきまで喧嘩していた二つのギルドメンバー達が驚愕と興味が入り混じった感じで話していた。
頭を下げられた俺も困惑を隠せないが、ギルドマスター二人をこのままにしておくわけにも行くまい……。
「あ、あー、ファルケンさんにペールセンさん。頭を上げてください、これからみんなで仲良くやっていけばいいじゃないですか。俺も悪かったですし、冒険者も商工会も悪かった。痛み分けってことで」
「う、うむ……そうだな」
「仕方ねえ、今までのことは水に流そうじゃねえか……」
ぼそりと『オリハルコンを破壊するようなのと敵対しちゃいけねえ』みたいなのを呟いていた気がするがスルーしておこう。
とりあえず場の空気が緩和し、それぞれメンバーが散ると元に戻ったペールセンさんがため息を吐きながら口を開く。
「それにしても驚いた」
「いや、すんませんホント……」
「構わん。どうせ素材として手に入れたものだから、壊れても片方だけ売れると思えばむしろありがたい。しかしバット、というのか? 凄い武器だな」
「ああ、これは武器じゃないんですよ。異世界の遊具で、本当の使い方はこう振りかぶって球を打つってね」
「それは興味深いな。というかそんなので壊したのか……」
ペールセンさんが冷や汗を流していると、それまで黙っていたサリアがにこにこしながら口を開く。
「そうですねえ、恐らくヒサトラさんには女神さまの加護があるからだと思いますよ。この世界へは女神ルアン様のお導きだからですね」
「おお、なんとルアン様の!? そうか、それなら納得がいく。ではイヴリース教が喜ぶんじゃないか」
「イヴリース教?」
聞きなれない単語が出て来たのでオウム返しをすると、サリアが説明をし始める。
どうやら俺に話したいことでもあったらしい。
「イヴリース教は女神ルアン様を崇拝する宗教で、各地に教会を持っているんです。ヒサトラさんは実際に女神様から声を聞いてここへ来ているので、助けを得ることは難しくないかと。お母様の薬も見つけやすいと考えています」
「おお……」
「どういうことかね?」
このタイミングで話をしたのは、王都というでかい町であることに加えて両ギルドマスターが揃っていたからということらしい。
元々、今日の内に挨拶をした後、どっちか経由で二人と顔を合わせてこの話をしたかったらしい。
確かに各地に同一組織があるなら情報交換は容易いか。ポンコツでなければ。
で、母ちゃんの話をすると、ペールセンさん以下、商人たちがすすり泣く。
「ふぐ……そういうことが……喧嘩なんぞしとる場合じゃないわ! よし、皆のもの、治療薬についての情報も収集するよう努めるのだ」
「「「おお!!」」
「良かったですね♪」
「ああ、まあそうだが……いいのか?」
盛り上がる中、昼間なのに酒盛りが始まり、俺は困惑しながら頬を掻く。
するとファルケンさんが俺の肩に手を置いて大声で笑いながら言う。
「がっはっは! こまけえこたあいいんだよ! 後で俺とペールセンとイヴリース教へ顔を出して話をしといてやる。後で使者が行くかもしれねえからそん時はよろしくな」
「あ、ああ」
「よーしそれじゃヒサトラ殿とサリアさんの歓迎会だ! 酒を回せえええ!」
「ちわー! オードブルもってきやした!!」
「対応が早い!?」
「ソリッド様達が頼んでくれたところと同じみたいですね」
◆ ◇ ◆
――とまあそんな感じで俺の攻撃力がとんでもないことにより、冒険者ギルドと商工会ギルドは仲直りしたらしい。
今日はどんちゃん騒ぎをしたが、翌日からは通常営業。
商人も冒険者も当日は本当に俺達を歓迎をしたかったんだなと思うくらい、各ギルドは人が出払っていて居なかったのだ。みんないい奴等だし、仕事に誇りをもっているのだろう。
で、運送業についての取り決めをしようとなったのだが、ソリッド様が居る時に頼むと言われていた。なので俺とサリア、ペールセンさんとファルケンさんが登城。
基本的にギルドを介さずにウチの店舗に荷物の持ち込みや移動の依頼をしてもらう形は今まで通り。ロティリア領でやっていたことを踏襲した。ギルドでやってもらうことは宣伝が主になりそうだ。
しかしこれだとギルドの旨味が少ないので、一般の人が移動するよりも冒険者と商人はギルド証を見せてくれればわずかだが料金を安くすることで決定した。
他にもなにかあれば考慮するということでまとまり、細かい町での運用等を決め、各領地と町へ通達してくれるそうである。
「それでは全てが決まるまで十日ほどかかるだろう。それまでゆっくりするといい」
「ありがとうございます!」
それから仕事か、楽しみだな。
……とか思っていると、翌日、台車にダンボールを乗せた騎士がやって来た――