「お世話になりました! またこっちへ来るときは必ず顔を出しますから」
「そうしてくれ、アグリアスが居なくなってこちらも少し寂しいからな」
「そうそう、私達も子づくり頑張るけど、あんたたちもね? ヒサトラさんは半分息子みたいなもんよ。お母さんの病気を治す薬の情報はこっちでも調査しておくわ」
「おお……」
エレノーラさんがいつものボーっとした調子ではなく、ハキハキと嬉しいことを言ってくれてちょっと感動する。
家族みたいなものだと言ってくれた上に、母ちゃんのことも気にかけてくれているのが特に。
「なによ。というかここから引っ越すんだから、ちゃんとサリアを守りなさいよ?」
「あんたたちも……ってそういうことか!? 俺達はそういうんじゃない、仕事仲間だって」
「……」
「わお、サリアの怖い笑顔、久しぶりに見たわね。……それじゃ、元気でね」
少しだけしんみりしたトライドさん、エレノーラさんと握手をしてトラックへ乗り込むと出発。
泣きそうになるからと二人は屋敷の入り口までで別れ、すっかり慣れた大通りをゆっくりと進んでいく。
しばらく戻らないだろうから目に焼き付けておきたい。
なんだかんだでトータル半年はこの町で過ごしていたので愛着がある。
「おーい、ヒサトラの兄ちゃん! 元気でな!」
「また来いよ!」
「おう、お前らはちゃんと勉強しろよ!」
「ちぇ、そればっかりだ!」
10km程度でゆっくり走る俺達に並走して子供たちが手を振ってきた。俺も笑いながら返事をしてやる。
俺が休みの時にコンテナに乗って遊んでたやつらだが、実はトラックより荷物に紛れていたトランポリンの方が気に入っていたんだよな。
回収するのも可哀想だったが、目に見えないところでケガをされても困るので今はコンテナにある。
「もう行っちまうのか、ほら移動中に食えよ」
「ああ、サンキュー親父さん」
「サリアちゃんも元気でね」
「ありがとうございます!」
肉屋に八百屋にパン屋と商店からもいろんな人が顔を出してきて、差し出しをくれる。異世界から来た怪しげなものに乗っている男にみんな快く応対してくれたのは本当にありがたいことだ。
「……向こうの世界ならどうなんだろうなあ」
「なにがです?」
「ああ、その世界において有り得ない怪しい奴をこんなに快く受け入れてくれるかって話だな。トライドさんが領主だったってこともあるけど、みんないい人で良かった。向こうの世界だと、不審者即通報で拘束まであるからな」
「怖いですねえ」
サリアがくすりと笑い、俺もつられて笑う。
次は王都……ソリッド様は好意的だが他の人間はどうか分からない。一緒についてきてくれるサリアが不利を被らないようにしないといけないのだ。
「みんなー! また来るよー!」
「お元気でー!!」
いよいよ町の出口へと到着し、振り返らずに進む。バックミラーを見ると入り口まで見送ってくれる人がいて俺は鼻をすする。
さよならは言わないのだ。また必ず会いに来るんだからな。
◆ ◇ ◆
――というわけで二人きりになったトラックは爆速で街道を突き進む。ロティリア領から王都へは片道七時間くらいなので、昼過ぎには到着予定となっている。
事前にソリッド様宛の手紙を出しているので会ってくれると思うが……。
まあ、住まいについては最初トラックで暮し、貯めたお金を使って住めるところがあるか探そうと思っている。
それはそれとして――
「なあ、本当に俺と一緒についてきて良かったのか? メイドの方が給料はいいかもしれないのに」
「ふふ、まだ言ってるんですか? 私はルアン様を知る人間の一人ですからね、ずっとヒサトラさんと一緒にいますよ? 結婚してもいいと思ってますけど? 私のこと、嫌いですか?」
「マジか……つーか嫌いなわけあるか。……まだ仕事が安定しないし、苦労をかけそうだから結婚はまだ考えられねえ。母ちゃんが来てから、だな」
「そうですね。まだ二年と少しはありますけど、いつこっちに来るか分からないですもん」
「だなあ……」
俺は地図が表示されているカーナビを睨みながらポツリと呟く。
ルアンはあれから一回も顔を出して来ないので状況が全く読めないのだ。俺も仕事が忙しいかったので声はかけなかったが、応えてくれたかどうかは微妙だ。
「どっちにしても治療薬を見つけるまではお母さまが来ても出来ることはないですし、さっと探しに行った方が良さそうですよね」
「あればいいんだが……そういう話って聞いたことないのか?」
エリクサー、アムリタ、世界樹の雫などなど……ゲームならよくある治療薬。噂くらいならと思ったのだが、
「私はずっとお屋敷でしたからねえ、そういう話とは無縁です。ごめんなさい」
「ま、それもそうか。王都の情報網をアテにするしかねえな」
冒険者ギルド、もしくは商工会ギルドというのもあるのでそこに話をして探してもらう、かだな。
自分で見つけなければ金はかかりそうだから、本気で稼がないと無駄になっちまう。
それでも王都なら依頼主も増えるだろうし、ソリッド様の魚問題を解決したら報酬を積んでもらえたり……
「それはないか」
「なんです?」
「いや、なんでもねえ。王都に行ったらまず美味いもんがねえか探そうぜ」
「あ、いいですねー」
とりあえず今は目的地を目指す。
しかし、到着すると――
「そうしてくれ、アグリアスが居なくなってこちらも少し寂しいからな」
「そうそう、私達も子づくり頑張るけど、あんたたちもね? ヒサトラさんは半分息子みたいなもんよ。お母さんの病気を治す薬の情報はこっちでも調査しておくわ」
「おお……」
エレノーラさんがいつものボーっとした調子ではなく、ハキハキと嬉しいことを言ってくれてちょっと感動する。
家族みたいなものだと言ってくれた上に、母ちゃんのことも気にかけてくれているのが特に。
「なによ。というかここから引っ越すんだから、ちゃんとサリアを守りなさいよ?」
「あんたたちも……ってそういうことか!? 俺達はそういうんじゃない、仕事仲間だって」
「……」
「わお、サリアの怖い笑顔、久しぶりに見たわね。……それじゃ、元気でね」
少しだけしんみりしたトライドさん、エレノーラさんと握手をしてトラックへ乗り込むと出発。
泣きそうになるからと二人は屋敷の入り口までで別れ、すっかり慣れた大通りをゆっくりと進んでいく。
しばらく戻らないだろうから目に焼き付けておきたい。
なんだかんだでトータル半年はこの町で過ごしていたので愛着がある。
「おーい、ヒサトラの兄ちゃん! 元気でな!」
「また来いよ!」
「おう、お前らはちゃんと勉強しろよ!」
「ちぇ、そればっかりだ!」
10km程度でゆっくり走る俺達に並走して子供たちが手を振ってきた。俺も笑いながら返事をしてやる。
俺が休みの時にコンテナに乗って遊んでたやつらだが、実はトラックより荷物に紛れていたトランポリンの方が気に入っていたんだよな。
回収するのも可哀想だったが、目に見えないところでケガをされても困るので今はコンテナにある。
「もう行っちまうのか、ほら移動中に食えよ」
「ああ、サンキュー親父さん」
「サリアちゃんも元気でね」
「ありがとうございます!」
肉屋に八百屋にパン屋と商店からもいろんな人が顔を出してきて、差し出しをくれる。異世界から来た怪しげなものに乗っている男にみんな快く応対してくれたのは本当にありがたいことだ。
「……向こうの世界ならどうなんだろうなあ」
「なにがです?」
「ああ、その世界において有り得ない怪しい奴をこんなに快く受け入れてくれるかって話だな。トライドさんが領主だったってこともあるけど、みんないい人で良かった。向こうの世界だと、不審者即通報で拘束まであるからな」
「怖いですねえ」
サリアがくすりと笑い、俺もつられて笑う。
次は王都……ソリッド様は好意的だが他の人間はどうか分からない。一緒についてきてくれるサリアが不利を被らないようにしないといけないのだ。
「みんなー! また来るよー!」
「お元気でー!!」
いよいよ町の出口へと到着し、振り返らずに進む。バックミラーを見ると入り口まで見送ってくれる人がいて俺は鼻をすする。
さよならは言わないのだ。また必ず会いに来るんだからな。
◆ ◇ ◆
――というわけで二人きりになったトラックは爆速で街道を突き進む。ロティリア領から王都へは片道七時間くらいなので、昼過ぎには到着予定となっている。
事前にソリッド様宛の手紙を出しているので会ってくれると思うが……。
まあ、住まいについては最初トラックで暮し、貯めたお金を使って住めるところがあるか探そうと思っている。
それはそれとして――
「なあ、本当に俺と一緒についてきて良かったのか? メイドの方が給料はいいかもしれないのに」
「ふふ、まだ言ってるんですか? 私はルアン様を知る人間の一人ですからね、ずっとヒサトラさんと一緒にいますよ? 結婚してもいいと思ってますけど? 私のこと、嫌いですか?」
「マジか……つーか嫌いなわけあるか。……まだ仕事が安定しないし、苦労をかけそうだから結婚はまだ考えられねえ。母ちゃんが来てから、だな」
「そうですね。まだ二年と少しはありますけど、いつこっちに来るか分からないですもん」
「だなあ……」
俺は地図が表示されているカーナビを睨みながらポツリと呟く。
ルアンはあれから一回も顔を出して来ないので状況が全く読めないのだ。俺も仕事が忙しいかったので声はかけなかったが、応えてくれたかどうかは微妙だ。
「どっちにしても治療薬を見つけるまではお母さまが来ても出来ることはないですし、さっと探しに行った方が良さそうですよね」
「あればいいんだが……そういう話って聞いたことないのか?」
エリクサー、アムリタ、世界樹の雫などなど……ゲームならよくある治療薬。噂くらいならと思ったのだが、
「私はずっとお屋敷でしたからねえ、そういう話とは無縁です。ごめんなさい」
「ま、それもそうか。王都の情報網をアテにするしかねえな」
冒険者ギルド、もしくは商工会ギルドというのもあるのでそこに話をして探してもらう、かだな。
自分で見つけなければ金はかかりそうだから、本気で稼がないと無駄になっちまう。
それでも王都なら依頼主も増えるだろうし、ソリッド様の魚問題を解決したら報酬を積んでもらえたり……
「それはないか」
「なんです?」
「いや、なんでもねえ。王都に行ったらまず美味いもんがねえか探そうぜ」
「あ、いいですねー」
とりあえず今は目的地を目指す。
しかし、到着すると――