自室に帰るとすぐにネットで調べた。
 
 親子関係 制限 言いなり 毒親

 何度も。何度も。言葉を変えては繰り返し調べた。
 今の時代はネットで調べればある程度のことは、知ることが出来る。

 凜のことを知りたい。助けたい一心で、何度も。何度も。検索を掛け続けた。
 検索をするたびに、様々な情報が提示される。
 一文字一文字、見落とさないように一生懸命文字を追った。

 調べていくうちに、凜の母親は「毒親」に該当するのではないかと思った。
 これはあくまで俺の仮説だが、凜の母親と重なるものが多かったのだ。
 
 文章を読めば読むほど、自分の無知さを痛感した。
 毒親のことを知れば知るほど、胸が押しつぶされたように痛んだ。夢中になって文字を追っていた。
 頬に冷たい感触が伝う。そこでようやく涙を流していたことに気づいた。

「あ、れ。……俺、泣いてんのかよ」

 一度泣いていることを認めると、余計に涙が止まらなくなった。
 なんだよ。心臓疾患の他にも悩みを抱えて……。あんなに細い身体で何背負ってるんだよ。

 半分、いや全部俺に分けてくれよ。病気の怖さも、苦しさも。一人で背負うには重すぎだ。
「君に救えるかもしれない」颯太くんの言葉が脳裏にこびり付いて離れない。

 俺にできることならなんだってやる。凛の病気を背負えるなら、喜んで俺が背負ってやる。
 決意と共に頬を濡らす涙を服の袖で乱雑に拭きとった。

 待ち受けにしている凜の写真を眺める。カフェで派手なケーキと撮った写真だ。口角を上げて微笑む凜の姿があった。

 この時の笑顔を、もう一度見ることが出来るなら、きっとなんでもできる。
 そう決意して、部屋に響き渡るほどの大きなため息を吐いた。