カレンダーが進む毎にコートの出番が増えてきた、12月の初旬。

場所はビジネス街のビルの地下にある、スチール撮影専用のスタジオ。
セイは雑誌撮影のスタンバイ中。
スタジオで試し撮りをしているカメラのシャッター音が、隣接した楽屋内にも響き渡る。


セイは鏡台の椅子に腰を下ろして雑誌を手に持ち鏡に姿を映すと、背後に写る専属マネージャーの冴木にポツリと言った。



「冴木さん。これから先、俺の仕事を少しセーブしてくれない？」



それが携帯を操作している冴木の耳に入ると、つり上がった目線を鏡越しに向けた。



「セイ、なに言ってるの？ あなたの歌声を待ってるファンはたくさんいるの。それに、メンバーのジュンに迷惑がかかるじゃない」

「わかってる。既に決定している仕事や、歌番組やスチール撮影はジュンに迷惑かかるから行くけど……。海外とか長期滞在の仕事や平日にかかるような仕事はこれからなるべく入れないで」


「急に仕事をセーブしたいだなんてどうしたの？ 仕事を休みたい理由でもあるの？」



セイとジュンは二人組ユニットとして日本中に旋風を巻き起こすほどの活躍っぷりだが、更なる飛躍を願う冴木は無茶な相談に頭を悩ませた。