「……え、なにこれ」

 送られてきたのは、桜の花に向かってカメラを構えた自分――の写真。

「いつのまに……!」

 完全に、盗み撮りだ。撮られていることに気づいていない写真の中の自分が恥ずかしく、頬がぽっと熱を持つのが分かった。

『うまく撮れてるだろ』
『ま、お前の撮る写真には敵わないけどさ』

 ピコン、ピコンっと通知音。

『こんなの、いつ!』

 思いのままに、問いただす文章を送った。

『ごめんって、真剣なのが可愛かったんで、つい』
「かわ……っ⁉」

 ぼんっと、頬が熱くなる。
 混乱する頭で考える。

 私が彼の写真を撮ってからは、すぐ家路についた。私はあれ以降カメラを構えていないし、彼も写真を撮る素振りなんてなかった。だから彼が私を撮ったのは、それより前のはず……。

「……ああっ!」

 そういえば、勝手に彼の写真を撮ったことを怒らないのかと聞いた私に、彼は困った顔をするだけだった。あのとき彼が怒らなかったのは、先に彼が撮っていたからか。

「んんん……っ」

 写真の中の無防備な自分に、そして彼の言葉に、とてつもない恥ずかしさが湧いて、私は布団にダイブして枕に顔を埋めた。

 彼の写真を無断で撮った私が言うのもなんだが、カメラを意識しないところで撮られる写真なんて、撮られた側からしたらたまったものじゃない。勘弁してほしい。

 でも。

 もし、私が彼を撮りたいと思うように、彼もそう思ってくれているのだとしたら……。

 ――そうだと、いいな。

 私は起き上がると、デジカメを操作して、彼の写真を呼び出した。桜の下、スマホに目を落とす、その穏やかな表情を見て。もしかしたら彼のスマホに映っていたのは、私の写真だろうか、……なんていうのは考えすぎかもしれないけど。

 ピコン。通知が鳴った。

『また明日』

 今届いたばかりの、彼の一言。

 また明日。
 その言葉が、胸をさわさわ揺らす。