目の前の光景に頭が真っ白になって、私は気が付くと、校舎裏の自転車置き場にうずくまってた。
雨が降っていた。
それも、半年に1度の大雨だった。
息の仕方が分からない。
前が少しずつぼやけてきてさらにパニックになる。
私を罵倒する声が耳元で囁かれ続けていた。





「ごめんなさい」
何度も何度も謝ったのに、消えることのない罵倒が、私の耳にこびりついていた。







「お願いだから、許して」
私の精一杯の声は、雨の音に掻き消されてしまった。







「…か!!」






「…うか!!!」







誰かの声が、する気がする。








「涼華!しっかりしろ!!」








目の前に傘を持ってしゃがんだ颯がいた。
「大丈夫、俺がいるから。な?ゆっくり、ゆっくり息してごらん」
あまりに優しい声に、さらに涙が溢れてきた。
彼の前では、泣きたくなかったのに。
ふーっとゆっくり息を吐く。
「そばにいる。もう心配しなくていいよ」
そう言って彼が撫でつつげてくれた背中だけが、やけに温かかった。










「落ち着いた?」
彼が私にペットボトルのココアを差し出してくれる。
保健室に行こうと言われたが、こんな姿を誰にも見せたくなくて、颯に無理を言って、空き教室に連れて来てもらった。
「うん、ありがとう」
掠れる声で言う。
彼は気を使って、私に何があったのかは聞いてこない。
ただ、しゃがんでいる私を上の教室から見かけて急いで1階まで降りてきてくれたらしい。
ちゃんと言わなきゃ。
何となく、そう思った。
それは申し訳ないけど、彼のためではなかったかもしれない。
自分を守るために、誰かに言われなきゃ、今にでも、壊れてしまいそうだったから。





「私の人生が楽しくないのは、颯のいうように、私のせいだって自分でも分かってる」






颯は何も言わず、でも少し苦しそうな顔で、私の話を聞いてくれた。






「私は、自分と周りにずっと一線を引いてるの。あの時から。」