いわゆる、英才教育ってやつだ。
俺の母親と父親は、とてつもなく、教育熱心だった。



同級生が、鬼ごっこやかくれんぼで遊んでいる時、
俺は一人、勉強をしていた。
勉強はそこまで嫌いじゃなかったから、別に良かった。
母親と父親がそれで喜ぶなら。
中学受験で、合格した俺は、県の最難関中学に通うことになった。



毎日出される沢山の課題。



当たり前のように休みを埋め尽くす部活。



死に物狂いで天才達が点数を競い合うテスト。



人が悪かったわけではない。
ただ俺にはそれが、苦しかった。
どうしようもなく辛い日々に、浅い呼吸を繰り返しながら、ひっそりと、耐え抜いていくしかなかった。















そして中学2年の頃のある日を境に、俺は自傷行為に手を出した。















きっかけは、本当に些細なもので、
勉強中にもっていたシャーペンを手の甲に刺したことだった。
問題が分からないイラつきがスッと消えたような気がして、気持ちよかった。





その後、自傷は日に日に悪化していき、
ついにはカッターに手を出した。





たらたらと流れる血を見ていると、俺の心にたまるストレスが少しずつ、出ていくような感覚がして、気が付くと、利き手の反対側の手首の一面が、真っ赤な線で埋め尽くされていた。
冬だったから誰にもバレなかったのが、不幸中の幸いだった。















そして、2年の学期末テスト。
俺は、ある一教科で、クラス最下位をとってしまった。







父親と母親の目はまるで、俺を人間だと認識していないような目だった。
ろくにご飯も食べれていなかった気がする。
毎日毎日、親からとてつもない罵倒を食らった。
その度に俺の自傷は悪化していった。
















そしてある日、俺は、大量出血によって、病院に救急搬送された。