四年後、俺は7歳、ルアス兄ちゃんは9歳となっていた。

俺は、剣術の修行は全くと言っていいほどせずに魔法にのめり込んでいた。

上級魔法が使えた時には先生以外呆れていた。
普通、魔法が扱えるのは大体7歳を越してからだそう。
中級魔法を扱えるようになっていて、剣術も王国騎士と遜色ないレベルであるルアス兄ちゃん、ましてや7歳にして上級魔法を余裕で扱える俺、簡単に言えば異常だった。

そんな俺の今のステータスはこんな感じだ。

名前:アルレルト・リゼラルア
称号:??????????
身分:准男爵家次男、平民
状態:良好
年齢:3歳
レベル:4
HP :42
魔力 :∞
力 :12
敏捷 :13(身体強化時に限り、最大490)
耐久 :16
固有スキル:【蒼炎魔法】(レベルは火属性魔法に依存)【氷獄魔法】(レベルは氷属性に依存)【無限(インフィニティ)
特殊スキル:【剣術】Lv1 素質A 【居合術】Lv1 素質A【火魔法】Lv14素質S 【氷魔法】Lv12素質S【神聖魔法】 Lv11素質S
【無属性魔法】Lv7 素質C

剣術なんかほったらかしで魔法の鍛錬ばかりをしていたので、このような感じに魔法のレベルは高く、剣術系のスキルは低く、という感じで魔法特化のスキルレベルになった。

ちなみにルアス兄ちゃんのステータスはこうだ。

名前:ルアス・リゼラルア
称号:????????
身分:人族、准男爵家長男、平民
年齢:9歳
レベル:7
HP:67
魔力:2054
力 :102
敏捷:76(身体強化時に限り最大502)
耐久:109
特殊スキル:【剣術】Lv8素質A・【火魔法】Lv8 素質B・【水魔法】Lv8 素質C・【風魔法】Lv8 素質B・【水魔法】Lv8素質B
【無属性魔法】Lv4 素質E

ルアス兄ちゃんは全てのステータスを満遍なくそこ上げして、オールラウンダーなステータスとなっている。
一般的な大人よりもはるかに優れたステータスとなっている。
俺もだけど。
俺の場合は無限がチートすぎて魔力のことを考えなくていいってのが便利極まりない。

両親はこの地方を納めている辺境伯自ら魔物の討伐を依頼されており、先生に俺たちを任せて迷宮に行ったり、野外で冒険者の仕事をしたりしている。
最近じゃ、迷宮で荒稼ぎしたそうで我が家の家計は潤いに潤っている。
実力的にはうちの両親はCランク級はあるのでかなりの実力者なのだ。
しかし、最近じゃ俺たち兄弟に負けることがほとんどだけど。

現在、俺たちはより実践的な修行をするべく、実践練習として模擬戦を兄弟で行っている。
上級魔法がある以上、俺が勝つと思うかもしれないが、案外そうでもない。
何を隠そう、ルアス兄ちゃんも紛れもない天才だからだ。

「よそ見厳禁だよ!!」

距離を詰めて、俺に木剣で斬りかかってくる。
俺はそれを冷静に見て体をそらして回避。
身体強化魔法の乗った拳をルアスに思い切りぶつける。
ルアスは体を回転させつつバックステップを踏むことで回避する。
そこに俺は追撃する。

この数年の中で、俺は固有スキルにあった二つの魔法を使いこなすことに成功した。
拳に蒼い炎を纏わせてルアスへと手を向けて纏わせた炎を塊にして思い切り放つ。
名付けてーーー

青の炎弾(ファントム・バレット)!!」

音すら立てずに前方へ勢いよく飛んでいく蒼い炎。
凄まじい速度で迫るそれを、ルアスは剣で真っ二つにする。
両断された炎弾は勢いそのまま、後方へと飛んでいき、大爆発を起こす。
斬った勢いを殺さずに突っ走ってくるルアスの剣を俺も腰の剣を抜き去って受け止める。
響き渡る金属音。
先に引いたのは俺だった。

「さすが兄ちゃん。あれくらいじゃビクともしないね」

俺は体に炎を纏わせながら言う。
俺の周囲は蒼い炎によって揺らめいている。

「はは。アルのそれは警戒しないわけにしないよ。僕の火の魔法とは違ってものすごい殺傷能力と威力があるからね」

「兄ちゃんの、先生直伝の魔法を切る技術ってのもかなり以上だと思うけど?」

「僕に言わせれば、得体の知れない底力を持つ弟の方が怖いさ」

ルアスの剣は普通の剣ではなく、魔剣だ。
確か名前は魔剣イフリートだったか?
火の魔法の威力が五倍になり、魔力を剣に通せば魔法を切ることのできる能力だったっけ?
こう言う時に鑑定スキルが欲しくなる!

「俺の炎ばっか警戒してたら足元掬われるよ!!」

思い切り上へと腕を上げる。
それに乗じて魔法を発動させる。
吸い込まれるような淡い藍色をした、豪氷。
それをルアスの足元からいきなり地面を割って出す。

「当然!警戒してるさ」

上空にジャンプして避けるルアス。
俺の狙いはそれだった。

「ならこれは??」

ルアスが飛んだ先の周りには人魂ににた蒼い炎が無数にある。
あの氷はこの火の玉をばら撒くための揺動。
俺は手を思いっきり合わせる。

流星炎(ラッシュフレイム)!!」

ルアスを中心に数十個あった火の玉は一斉にルアスへ向けて高速へと飛んでいく。
一点に瞬間火力を集中させるこの魔法。
殺傷能力、威力ともに抜群である。

爆発音と爆風が森の中に轟く。
白煙が立ち込める中、ルアスは空飛ぶ先生に抱えられて防御結界で守られていた。
どちらか一方に致命的な攻撃が入る寸前、こうして先生はダメージを負うほうを助けてくれるのだ。

「勝負あったな」

「はい……いいようにやられましたね」


抱えられたまま、ルアスはがっくりとうなだれる。

「そうだな。戦闘における判断が甘い。常に頭の中に相手の動きに細心の注意を払い、どれをとっても正解といえるような最低四つの選択を持ちながら戦闘しろ」

「はい」

「これで俺の96勝目だね。兄ちゃん」

「はは。怖い弟だな」

通算成績は俺の96勝48敗だ。
かなり高い勝率で俺はルアスに勝っていた。
まぁ、蒼炎・氷獄ありきの成績だけど。

「次男の方は、術式構築が遅い。スキルに甘えんなって何回も言ってるだろ」

「クセがついちゃってますね。スキルに頼る」

「そうだ。直せ。このままじゃお前は特異体質である【能力無効化(アンチスキル)】の餌食になる。早急に直せ」

「2回言わなくてもわかってますよ〜」

てな感じで、いつもの鍛錬をおこなっていた。
そして、夕刻、家に帰ると家族会議が始まった。
もちろん先生込みで。

議題は俺たちの今後だった。

「さて、お前たちは確実に父さんたちより強くなった。それもかなり、冒険者ランクで言ったら有にB級は越しているだろう。で、だ。リグランと話し合ったんだが、より一層の実践的な訓練を兼ねて、冒険者の仕事をこれから受けてもらう」

「冒険者ですか?でも僕は9歳であり、アルは7歳です。冒険者になるには最低でも12歳以上ではいけませんが?」

父様の発言に質問をルアスは投げかける。
それに答えたのはリグランだった。

「まぁな。だが、冒険者ってのは案外融通が効く。俺はA級冒険者だ。実力的には最強だけど。冒険者っていうのはA級の推薦でB級以上にはすぐ上げられる。まぁ、お前らガキの年齢を鑑みて最初はE級ってところからだろうが」

ここで、一応冒険者の解説をしておこう。

冒険者ギルドとはある国や地域の枠組みとは別の、魔物被害や迷宮攻略を専門とする機関のこと。
そこにギルド会員として登録している人間こそが冒険者なのだ。
冒険者は己の力一つで依頼や魔物、迷宮に挑み、依頼の報酬、素材や宝箱の秘宝なんかで生計を立てている。
前世の異世界転生モノの設定とほぼ一緒だ。
世界の各位に支部が設置されており、各地で盛んに冒険行が行われている。

そして、冒険者ギルドが決めているものに魔物のランクがある。
G〜Aの七段階評価で分けられ、やや強い"+"と、やや弱い、もしくはそれのランクに応じた準級という意味合いで"ー"評価が付く。
簡単に言えばBランクより強く、Aランクより弱い魔物の評価はB+ランクってことでそれの応用でB+ランクより強く、Aランクより弱い魔物がAーって評価になる。

それに応じて冒険者ランクもとり決められている。
ちなみに級という呼称は冒険者の中だけの単語で、正式にはランクである。意味は全く変わらないけど。

そして、中にはA〜Gの評価基準の枠組みから外れて超強力な個体が生まれることがある。
それが特別指定ランク、S評価、SS評価である。
度々生まれる魔王や、竜王なんかのランクがこれである。
これは言ってしまえば自然災害そのものであり、災厄だ。
規格外の存在、それがS以上のランクだ。
もちろん冒険者にもそのくらいの実力を持つものがいるがSS級は三大陸合わせた全世界で三人、SS〜S級は世界で合わせて15人しかいない。
先生はめんどくさがって依頼を受けないため、Aランクだが実際の強さは多分SSランクだろう。

これが簡単な冒険者の説明だ。

話を戻すと、俺たちを冒険者にならせようって話だったな。
俺も、そろそろルアス以外と戦いたくなってきた頃だし、自分試しという点でも悪くはない提案だ。


「私はやっぱり反対したいわ。アルを連れて行けば神聖魔法で傷も癒せて、本人もすごく戦える。戦闘はすごく楽になる。それはルアスを連れて行っても同じことだわ。けど。やっぱり心配。10歳にも、ましてやアルなんて7歳。リグランさんがいるから心配らないとは言うけれどまだ早いと思うわ」

「リアの言う事は分かる。けど、子供たちの成長を促すには鳥籠の中の鳥のように囲っておくわけでは行けないと思うんだ。この子ら2人には人を大いに助けられる力がある。俺はこの子らに人を助けられる人間になってほしいんだ」

「ええ。それはわかってるわ。でも」

「なら、こう言うのはどうでしょう」

ルアスが会話の中に入っていく。

「これからの一週間。一つの怪我でもしたら冒険者をやるのは保留。ってのはどうでしょうか?」

「ははっ。そりゃあいい。俺が教えたこと全て活用できればお前らにはこのへんの魔物からは指一本触れられねぇはずだ」

「リグランさんがそう言うのなら、やってみなさい。そして結果を出して。まだ決まっていないけど冒険者になる以上、とって切り離せない事だから」

とのことで母様が折れてくれた。
これで会議は終了と思ったのも束の間。
先生が声を上げた。

「このガキ共10歳近い、ってことで俺から提案がある」

「提案?それは何だ?」

父様がそう先生に聞く。
ニヤリと笑いながら先生は口を開く。

「こいつらを学術都市"エルヴァーレ"のエルヴァーレ学院にぶち込みたい」

「「エルヴァーレ学院に!?」」

両親は先生の言うことに心底驚く。
何がそんなに驚くことなのだろう。
俺たちの住む国の地名にそんな場所なかったと思うのだが。
どこか違う地域だろうか。

「父様母様、先生。エルヴァーレとはなんでしょうか?」

「ああ、それはねーーーーー

父さんが説明してくれた。

まず、俺たちの住む国であるロンヴァルキア王国のある西方大陸から北、南方大陸、東方大陸が一歳に交わる地点の半島の中心部、世界の中心にエルヴァーレがあるという。
そこは武術・魔術その他全ての技術が集まる世界で一番知的な都市であり、どこの国にも属さない。
冒険者ギルドの本部もそこにあり、S級以上の冒険者も複数滞在しているような土地。
かの著名な"賢王"と呼ばれるリリアス・リリナーヴァが治める場所であり、世界のどこからも干渉を受けない研究や武芸の楽園である。
そこにある学校がエルヴァーレ学院だ。
名実ともに世界最高の学校で全校生徒は武術科魔術科合わせて2000人以上であり、6年の教育課程がある。
その生徒たちが都市内でよく見かけることから学術都市エルヴァーレという別名が付いたのだ。
その年度に10歳となる子供たちに受験資格があり、学術都市らしく家柄なんぞ関係なしに実力で決まる試験だそうだ。
数万もの受験者数がいて両方の科におおよそ200人ずつ入学が可能である。
この学校に入学できたらその年における世界で上位200位、上位0•0001%の実力をもつ者と言われる狭き門。
こんなの東大理科三類の方がまだマシなくらいだ。
入学した場合の手当も抜群にいいらしい。
まず、各国が敵味方関係なしに寄付金を送り続けていて、その分生徒に手厚い教育を施している。
先生も優秀であり、知力が尋常じゃないほどあるものや、世界屈指の強者などが教壇の上に立って生徒に指導している。
何を言っても優秀な人材を産むために国が動いて入学者を出そうとする。
それはこの学校に入る者たちは入学者最低点を取ろうとも天才であり、その天才を育成すること自体が国の発展、戦力増強などいろいろな国の利益につながるのだ。
教育自体が国の根幹であるのだ。
だからこそ各国は金を出すのだ。
自前で育成できないのか?そう思うかもしれないが実際は教える人材に最適な人物がエルヴァーレにしかいないことが大きいだろう。
入学金や従業料を払っていれば単位を落とさない限り最高の環境で最高の勉強、鍛錬できるのだ。
先生もこの高校で主席合格、主席卒業した層である。
この学校にも特待生制度があり、入学時にトップ10だったらS級クラス、11〜50までがAクラス、51〜150までがBクラスであり、それ以下が通常学生である。
Sクラスは全てにおいて免除される特権階級。学校でも授業を受けなくても単位を落とさなければそれでいいのだ。両部屋も完璧に完備されており、1人部屋かつ貴族のもつ部屋のような環境に住めるのだ。
Aクラスは授業料・入学金が無料。学食などはお金はかかるが基本的にはかなりの優遇だ。両部屋は2人部屋だそうだ。
Bクラスは入学金が無料になるだけ。あとは通常学生と同じだ。寮では5人部屋だそうだ。

最高の環境を提供してくれるだけあって、学費はすごく高い。
日本円にして、日本の私学の三倍くらいかかるそう。
まぁ、それでも俺たちの国であるロンヴァルキア王国の国立魔術学校の方が学費高いけどね。
でも、先生が言うってことは、俺たちならその高みを目指せるってことだ。

「そんなレベルの高い学校、本当に行けるの?」

「ああ。主席入学主席卒業の俺が言う。間違いなく"合格"はできる」

どう言うことなのだそれは?
含みのある言い方だ。
合格はできるらしい、ああ、そう言うことか。
俺は笑みを浮かべながら言う。

「"現時点"では特待生、Sランクにはまだ遠いってことですね」

俺がそう言うと先生はニヤリと笑う。

「まぁ、そう言うこった。まぁ、現時点でもAランクは取れるだろう、が俺の弟子である以上、そんなの不合格と同一。Sランク……主席合格でないと認めねぇ。そうでなかった時点で入学は無しだ」

「おいおいそれは……やりすぎではないか?Aランクでも、ましては合格しただけでもとてつもなくすごいのに」

「甘いなマルス。言っただろ?俺に家庭教師をやらせる以上、ガキどもには中途半端はゆるさねェっての。やるなら最初から長tんだろ」

「ふふふ。何をビビってるのよマルス!!親がうちの子信じなくてどーすんの!!この子ならきっと一番になれるわ」

すごい期待のかけられようだ。
答えなければな。

「もちろんです先生。父様母様、俺たちは一番に余裕でなります。ね?兄ちゃん」

「そうですね。兄としても世界でも一流となれるよう頑張ります。弟に負けてばっかりじゃ情けないからね」

2人でそういうと、両親はいきなり泣き出した。

「くぅぅぅぅ!!立派になって!!!!」

「あなた何泣いてんのよ!!あーも!さすが私たちの子ね!」

俺ら2人を一気に抱きしめる母様。
その母様ごと抱きしめる父様。
俺は、この時かけがえのない家族との絆を感じた。

前世、親孝行を満足にできなかった以上、今回は二倍は親孝行せねば。
俺はより一層未来への期待を高めつつ、気合を入れた。