「ま、まずい! この人息をしていないぞ!」
しかし、こんなに人が集まっていても誰も適切な救護方法を知らない。もし、この場に想太がいたらすぐに的確な指示を出してくれるが、今はいない。
なんて私たちは無力な存在なんだろうか。ただただ見ていることしかできない自分が、こんなにも憎たらしいとは。
それから、三分後に救急車が到着する。このすぐ近くに消防署があるおかげですぐに来ることができたのだ。
続々と救急車から救急隊員が降りてきて、倒れている彼の様子を確認するが、時間が経つにつれ彼らの顔が青ざめていき空気が緊迫する。
「お、おい! 早くストレッチャーを! 急いで病院へ連れていくぞ!」
救急隊員の一人が真剣な様子で、他の隊員へと呼びかける。倒れている彼の周りには三人の救急隊員。彼らは"せーの"で男性を持ち上げるとゆっくりとストレッチャーに仰向けで乗せる。
その時、彼の右手から一つの何かがこぼれ落ち、私の身体が震え始める...そこに落ちていたものは見覚えのある黒い鳳蝶のキーホルダー。私が海にあげたのと全く同じの。
そうだ...あのキーホルダーだって、他にも買っている人がいるかもしれない。
私の思い違いであってほしいと願いながら、ストレッチャーで運ばれている彼の顔を確認する。
彼の顔が私の目に映り込んでくるのと同時に、私の体から何かが抜け落ちていった。
目を閉じたまま眠っていたのは、私がこの世で一番大好きな彼だった...
しかし、こんなに人が集まっていても誰も適切な救護方法を知らない。もし、この場に想太がいたらすぐに的確な指示を出してくれるが、今はいない。
なんて私たちは無力な存在なんだろうか。ただただ見ていることしかできない自分が、こんなにも憎たらしいとは。
それから、三分後に救急車が到着する。このすぐ近くに消防署があるおかげですぐに来ることができたのだ。
続々と救急車から救急隊員が降りてきて、倒れている彼の様子を確認するが、時間が経つにつれ彼らの顔が青ざめていき空気が緊迫する。
「お、おい! 早くストレッチャーを! 急いで病院へ連れていくぞ!」
救急隊員の一人が真剣な様子で、他の隊員へと呼びかける。倒れている彼の周りには三人の救急隊員。彼らは"せーの"で男性を持ち上げるとゆっくりとストレッチャーに仰向けで乗せる。
その時、彼の右手から一つの何かがこぼれ落ち、私の身体が震え始める...そこに落ちていたものは見覚えのある黒い鳳蝶のキーホルダー。私が海にあげたのと全く同じの。
そうだ...あのキーホルダーだって、他にも買っている人がいるかもしれない。
私の思い違いであってほしいと願いながら、ストレッチャーで運ばれている彼の顔を確認する。
彼の顔が私の目に映り込んでくるのと同時に、私の体から何かが抜け落ちていった。
目を閉じたまま眠っていたのは、私がこの世で一番大好きな彼だった...