それからは三人で海にバレないように隠し続け、今まで通り過ごしてきた。時々私は耐えきれず顔に出てしまうこともあったけれど。



 きっと海が恋をすることを避けていたのは、いつ死ぬかわからない自分よりも、もっと健康でずっと側に居てくれる人の方がいいからという海の優しさの現れに違いない。



 それでも、私は彼がいい。いや、彼でなければ嫌だ。私がこれからも隣を歩いて行きたいのは海の隣なのだ。それだけは覆ることはない。



 だからこそ、海が私に告白をすると言ってくれた時は、私の心臓が止まってしまうくらい嬉しかった。



 この先、二人で大人になって結婚して、子供にも恵まれ...そんなことを考えると幸せすぎてにやけが止まらない。



 靴を履いて鏡で身だしなみをチェックし、玄関の扉を開ける。



「お母さん、行ってきます!」



 これが私の最後の笑顔になるなんてこの時は思ってもいなかった。