最後に海ママはこれだけは約束してほしいと言われた。『一人で抱えきれなかったら想太くんや一花ちゃんに話してもいいけれど、絶対に海には知っていることはバレないでほしい。それと海とは今まで通り接してほしい。それが海がみんなに隠していた理由だから』と。



 私は海ママに必ず約束は守ると誓い、その日は家に帰った。目が腫れて赤くなっている私を見て母はとても心配していたが、黙ったまま部屋に行き、出せる分の涙を思いっきり出した。



 人間の体は不思議だ。何時間も涙を流すことが可能なのだから。



 その日の夕食は水しか喉を通らなかった。後から聞いた話だが、私の両親は私たちが小さい頃から海の心臓のことは知っていたらしい。



 翌日にはすっかり熱も下がり、腫れた目のまま海と並んで中学校に向かった。海には『どうしたの?その目』と言われたが、映画で感動したとかそれらしい理由をつけてごまかしたはず。



 隣にいる海は今でも不安と戦っているのだと考えると、涙は昨日枯らしたはずなのにまだ出てくるそんな感覚だった。



 当然学校に着いても頭の中は海のことばかり、授業も全く聞いておらず先生には心配され保健室に行くよう言われる始末。



 寝不足だったこともあり、保健室ではぐっすりと眠ることができ、気付けば放課後になっていた。帰ろうと思い、立ち上がるとそこには想太といっちゃんの姿。どうやら、海はお店の手伝いで先に帰ったらしく、私の体調をとても心配していたと二人から聞く。



「なぁ、希美。お前今日変だぞ?」



「なんかあるなら私たちに話してね?」



 その言葉に耐えきれなくなった私は二人に昨日聞いた全てのことを話した。話を聞いた二人は私と同様に驚きの色で隠せない表情をしていて、目からは溢れるばかりの涙を流していた。



 保健室の先生はたまたま会議でいなかったらしく、私たち三人はグラウンドから聞こえてくる楽しげな部活動の声とは裏腹に、悲しげな涙を嘆き泣きあった。