二人とも大切な人に送る花が決まったので、大事に花を抱えレジへ持っていく。
「おぉ、どうしたお前ら二人揃って花なんて持って・・・ん?もしかしてお前ら」
僕らの手にしている花を見て気付いたのだろう。さすがは花屋の店主。その場で綺麗にラッピングまでしてもらい、お金を払おうと財布を取り出す。
「父さん、会計はいくら?」
「ん?お金はいらんぞ。それよりも二人とも頑張れよ!それとこれは男同士の秘密な」
顔の前に人差し指を立ててシーっと、"秘密"だと語りかけてくる父さん。
「おじさん、ありがとう!」
「父さん、ありがとう!」
「こら、秘密だって。母さんにバレるだろ。さっさと行きなさい」
父さんの目には涙が溜まっている気がしたが、気のせいだろう。一度家で服を着替えたかったので、想太とはここでお別れ。
「海、頑張れよ!あとで電話待ってるから」
嬉しそうに笑う彼の顔を見るだけで、少しずつ僕の中から勇気が湧いてくる。
「うん。必ず電話する。それじゃ、また明日学校で」
「おう、明日からカップル登校だな!」
彼を見送りながら僕はその場で一度深呼吸をする。想太の姿が徐々に小さくなっていく。彼にこの後電話するときのリアクションが楽しみで仕方がなかった。
自室に戻り、フード付きのジャケットをクローゼットから取り出し羽織る。机の上には昨日、みきちゃんからもらったばかりの黒い鳳蝶のキーホルダー。
そのキーホルダーを落とさないように手に取り、ジャケットのポケットに入れる。
キーホルダーなので本来はどこかに付けるべきなのだが、なぜかこのキーホルダーはお守りとして持っておきたかった。これからもどこかに付けることはないだろう。
玄関に置かれている等身大の鏡で、身だしなみをしっかりチェックしてから関の扉を開ける。
影に包まれた家の廊下に、パッと外から差し込む太陽の光が僕諸共明るく照らす。
無性に両親の顔を見て、勇気をもらいたかったので、もう一度店に顔を出しに行く。
丁寧な手付きで花の余分な部分をハサミで切り取っている母。どこかに寄贈するのか、色々な種類の花たちを一つの芸術品として束ねている父。
花に真摯に向き合っている二人の姿は、僕にとって自慢すべきくらい尊敬している。今まで何度も見てきた姿だったが、今日のこの姿だけは絶対に忘れてはいけないような気がした。
「父さん、母さん。いってきます!」
その時二人がどんな表情で、どんな言葉を僕にかけてくれたのか、もう僕は覚えていない。
「おぉ、どうしたお前ら二人揃って花なんて持って・・・ん?もしかしてお前ら」
僕らの手にしている花を見て気付いたのだろう。さすがは花屋の店主。その場で綺麗にラッピングまでしてもらい、お金を払おうと財布を取り出す。
「父さん、会計はいくら?」
「ん?お金はいらんぞ。それよりも二人とも頑張れよ!それとこれは男同士の秘密な」
顔の前に人差し指を立ててシーっと、"秘密"だと語りかけてくる父さん。
「おじさん、ありがとう!」
「父さん、ありがとう!」
「こら、秘密だって。母さんにバレるだろ。さっさと行きなさい」
父さんの目には涙が溜まっている気がしたが、気のせいだろう。一度家で服を着替えたかったので、想太とはここでお別れ。
「海、頑張れよ!あとで電話待ってるから」
嬉しそうに笑う彼の顔を見るだけで、少しずつ僕の中から勇気が湧いてくる。
「うん。必ず電話する。それじゃ、また明日学校で」
「おう、明日からカップル登校だな!」
彼を見送りながら僕はその場で一度深呼吸をする。想太の姿が徐々に小さくなっていく。彼にこの後電話するときのリアクションが楽しみで仕方がなかった。
自室に戻り、フード付きのジャケットをクローゼットから取り出し羽織る。机の上には昨日、みきちゃんからもらったばかりの黒い鳳蝶のキーホルダー。
そのキーホルダーを落とさないように手に取り、ジャケットのポケットに入れる。
キーホルダーなので本来はどこかに付けるべきなのだが、なぜかこのキーホルダーはお守りとして持っておきたかった。これからもどこかに付けることはないだろう。
玄関に置かれている等身大の鏡で、身だしなみをしっかりチェックしてから関の扉を開ける。
影に包まれた家の廊下に、パッと外から差し込む太陽の光が僕諸共明るく照らす。
無性に両親の顔を見て、勇気をもらいたかったので、もう一度店に顔を出しに行く。
丁寧な手付きで花の余分な部分をハサミで切り取っている母。どこかに寄贈するのか、色々な種類の花たちを一つの芸術品として束ねている父。
花に真摯に向き合っている二人の姿は、僕にとって自慢すべきくらい尊敬している。今まで何度も見てきた姿だったが、今日のこの姿だけは絶対に忘れてはいけないような気がした。
「父さん、母さん。いってきます!」
その時二人がどんな表情で、どんな言葉を僕にかけてくれたのか、もう僕は覚えていない。