桜となる頃、また君と。

「なるほどな。それで、どう告白したらいいかわからないってことか」



「う、うん」



「そんなの海の気持ちをぶつければいいんだよ!俺もそうだったから」



 これは相談する相手を間違えてしまったかもしれない...一花にすればよかったと後悔し始める。



「それは想太だからできたことであってさ・・・僕には」



「言えてるかもな・・・あ!ならさ、海の家花屋なんだから花でも一緒に渡してみたら?」



「いいかもね、それ。一度帰って花選んでみるよ。それとさ・・・」



「ん?どうした?」



「告白するならもちろん直接だよね・・・」



 正直、これが一番気になっていた。多分、みきちゃんは僕のことを好きだと思う。でも、いざ告白となるとなかなか勇気が出せない。



 今朝、啖呵を切って情けないのは承知の上だが、恋愛未経験の僕にはかなりハードルが高いのだ。



「えらい弱気だな。もちろん直接の方がいいけど、無理なら自分の気持ちをメールに込めて、『付き合ってください』ってことだけを直接言えばいいんじゃない?直接も嬉しいけど、メールならいつまでも残り続けるしな」



 想太の名案に思わず、いつの間にか手元に届いていたオレンジジュースを一気に飲み干してしまう。



「さすが、想太。想太に聞いてやっぱり正解だったよ!」



 さっきまで心の中で想太に文句を言っていた自分を殴りつけてやりたい。



「当たり前だろ!親友なんだから。それより時間大丈夫か?」



 時間を確認するとお店の時計の針は十一時半を差している。今から一度家に戻って花を選ぶので、みきちゃんとの待ち合わせ時間まで割と時間ギリギリ。



「そろそろ出ないとまずいかも」



 二人で席を立ち上がり、領収書を手にしてレジに向かう。今回は僕の誘いだったので僕がお金を払うことにした。



 店員さんに千円札を手渡し、お釣りを財布にしまう。『ご馳走様でした』と店員さんに告げ、扉を開ける。



 "チリンチリン"となるベルの音が『いってらっしゃい』と僕の告白を勇気づける、そんな音に聞こえた。