それからも僕らは他愛もない話をしながら、笑い合った。時刻を確認するともうすぐで二十三時になるところ。



「そろそろ寝ようか」



「そうだね、僕も明日想太と出かけるから寝ないと」



「海、今日はありがとうね。最高の誕生日になったよ」



「喜んでもらえてよかった。来年もまた祝うよ」



 来年は彼女にどんなものをプレゼントしようか、気が早いが頭をよぎる。サプライズとかでもいいかもしれない。



「その前に海の誕生日が来るよ、私も張り切らないと!おやすみ、海」



「うん、おやすみ」



 背中を合わせて寝るはずだったのに、いつの間にか手を繋いだまま仰向けで寝ている僕ら。



 隣に彼女が寝ていると考えるだけで寝られないかもしれないと思っていたが、意外にもすぐに睡魔が襲いかかってくる。最初はどうなることかと思っていたが、隣に好きな人が寝ているとこんなにも落ち着くものなんだと実感する。



 僕の瞼が閉じかかった時、体にしがみ付くような感覚が。うっすら目を開けてみると彼女が僕の体に抱きつく形で寝ている。



 もうすでに彼女は安心しきった様子で寝息を立てているらしく、僕の気持ちなんて知る由もない。僕も彼女の腰に手を当て引き寄せるように再び目を静かに閉じた。



 カーテンの隙間から覗くベールみたいに薄い雲に隠れた月が、二人を優しく包み込むように照らす。



 まるで王子様とお姫様のような幻想的な御伽噺にも出てきそうな瞬間。



 月が雲に隠れるように僕らも深い闇へと落ちていくのだった。