「ねね、桜の花言葉って何ー? 海なら分かるでしょ?」



「分かるけどあまり言いたくはないな」



「なんでよ!もしかして不吉な意味だったりするの?」



「いや、桜自体にも花言葉はあるんだけど、実は桜は品種によっても花言葉の意味が変わってくるんだ」



 今は昔と違って品種改良によって様々な種類の桜があるのだ。みんなが桜と言われてイメージする桜は、日本における代表的品種のソメイヨシノ。



 春になるとこれが日本中で満開になり人々に春の始まりを告げ、空から降り注がれる雨に打たれて散っていく。



「これはソメイヨシノって言ってね、花言葉は『純潔』『優れた美人』だよ」



「えー! てことは私のことじゃん!そうかそうか、桜は私か」



 "だから言いたくなかったのに"とため息を吐く。これを毎年言わされるこっちの身にもなってほしい。彼女は知っているくせに毎年毎年桜の花言葉を聞いてくる。



 確かにみきちゃんは可愛いが自分で言ってしまっては元も子もない。それにこのやりとりの一体何が楽しいのか意味不明。時々よく分からないことを言い出すのも彼女らしいが。



 桜の花びらが優雅に宙を舞い、川の水と共に流れていく。あの桜の花びらのように僕もどこかへと流れて行きたいものだ。



 時間がかかっても良いから、のんびりと自由気ままに何にも縛られることなく。



 僕は一年の中で一番春が好きだ。春になると今年もまた始まったなと実感できるし、暖かいような少し肌寒いこの感じが何より心地がいい。