もう家が見えかかってきた所で、彼女が僕の前に手を差し出してくる。



 なんのことかわからず、彼女の顔を覗くと俯いたまま口を一文字にぎゅっと引き締めているのが見えた。



「あ、あのさこれって・・・」



「お願いだから、口にしないで!恥ずかしいから・・・」



 なんで僕は聞いてしまったのだろう。本当はわかっていたはずなのに度胸のなさから彼女に聞いてしまった。



 情けない...手を繋ぐなんて昔は当たり前にしていたのに今となっては、僕らの手の間に壁があるかと思うくらい、彼女の手までの距離が遠い。



 ゆっくりと彼女の指先に触れる。ピクっと動く彼女の手。そのまま優しく彼女の手を包むかのように握りしめる。



「あ、温かいね・・・みきちゃんの手」



「も、いいから黙っててよ!」



「ご、ごめん」



 昔よりも小さな手。いや、僕の手が大きくなったのだと実感する。それに僕の手にはない柔らかですべすべした感触。



 黙ったまま手を繋ぎ、僕らは僕の家の玄関の前に到着する。いつ手を離せばいいのか、タイミングを失ってしまい玄関の前なのにもかかわらず手を繋いだままの僕ら。



 離さないといけないのにこの手を離したくない。そんな衝動に襲われる。それでも離さないといけない、この小さくて守りたくなる手を。