桜が風に揺られ、香りと花びらが僕たちの足下へ流れてくる。



「見て!公園の桜満開だ!綺麗だなぁ、お花見したくなっちゃうよね」



「確かに満開な姿もいいけれど、やっぱり桜は儚く散っていく美しさが好きだな。風情があっていいよね」



「海さ、小説の読みすぎじゃない?なんか高校生って感じしない」



 隣で楽しそうに笑う彼女を横目に僕は桜を眺める。桜はいつ見たって美しいし綺麗だ。



 でも、どこか悲しげなオーラを纏っている気がするのはなぜなのだろう。



 桜を見て儚いと捉えるのは、日本人特有の感性らしい。前に読んだ本に書かれていた内容を思い出す。



 昔の人たちもそんなことを思いながらお花見をしていたのかと疑問に思ってしまう。



 桜には人を興奮させる効果がある。



 だから、たまにニュースなどでお花見中に刃物を持った人が...などの物騒な事件がある。



 桜の花粉には『エフェドリン』という物質が存在しており、直接的に人を興奮させる作用があると言われている。



 この話が本当かどうかは定かではないが、少なくとも僕は桜が人を興奮させる力があるのは本当なのではないかと思っている。その証拠に僕の隣に並んで歩いている人は、興奮気味で桜を見ているから。