「あのさ、みきちゃん」



「ん? どうしたの?」



 ブランコに夢中になっている彼女。一体彼女は何歳なんだろうか...でも何事にも全力で楽しむことは一つの才能とも言える。



「変なこと聞くけどさ、僕の名前ってすごくない?」



「へ? 急にどうしたの?」



「いや、この前ふと気付いたんだよね。僕の名前ってさ・・・」



 "ワンワン!"散歩をしているおばあちゃんの犬の鳴き声にかき消されてしまう僕の声。



「ごめん、聞こえなかった。もう一回言って?」



 もう一回話そうか迷ったが、一度話した後に冷静になって考えてみたら、恥ずかしくなってきたので首を横にふる。



「そっか〜、それじゃまた今度聞かせてね」



「う、うん」



 多分恥ずかしくて面と向かって言うことはないだろうけれど...



「名前かぁ〜、私この名前好きじゃないからな〜・・・」



「希美って名前が?」



 名前を呼んだ途端に睨みつけてくる彼女。その目は"今すぐにでも飛び掛かってやるぞ"という目をしている。
 


 彼女は僕が『希美』と呼ぶことだけはものすごく嫌がるのだ。僕以外の人は気にしてもいないのに、僕だけは絶対にダメらしい。



 名前を呼ぶのがダメな理由だけはわからないが、彼女がこうなってしまった原因はあれしかない...