それから程なくして想太と一花は先に二人で帰ってしまったので、部屋に取り残される僕とみきちゃん。
 


 想太と恋についての話をしてから、みきちゃんのことを意識してしまい少しだけ気まずい。流石にまだ告白する勇気は僕にはない。



「ねぇ、今から時間ある? もしあるならよく二人で遊んだ公園に行かない?」



 時刻は十八時前。夕食の時間まではまだ時間があるし、公園までは徒歩で数分の距離なので、歩いて行っても問題はないだろう。もちろん走るわけでもないので。



「いいよ、久しぶりに行こっか」



「やった! あ、一回家に戻ってもいいかな?」



 二人で僕の家を出て、みきちゃんの家の前で彼女が出てくるのを待つ。遠くの空がオレンジと黒色の境界線で覆い尽くされていく黄昏時。



 昔はこのぐらいの時間までみきちゃんと今から行く公園でよく砂遊びをしたり、スケッチをしたりしたのを思い出す。無邪気そのものだった僕ら。いつの間にか僕らは大人になってしまったらしいが。



 僕が倒れてからは行く機会がめっきり減ってしまったけれど、思い出の公園に変わりはない。



 あの時は公園から帰るたびに母さんに『帰ってくるのが遅い!』と怒られていたのがなんだか懐かしい。



「ごめん、お待たせ〜」



 先ほどと何も変わっていない様子の彼女。



「これ、海にあげようと思って取ってきたの!」



 彼女が手にしていたのは、白と黒の色違いの鳳蝶(あげはちょう)のキーホルダー。



「なんで? 今日は特に誕生日・・・あ! プレゼントあげるの忘れてた!」



 すっかりみきちゃんの容姿に惹かれてしまい、プレゼントをあげるのを忘れていたなんて。



「じゃあ、交換こしよ!」



 彼女がどちらの色がいい?と聞いてきたので僕は黒の方を選ぶ。なんとなく、黒は彼女には似合わない色だと思った。太陽が黒く染まることがないように、彼女も染まることはなさそうだったから。



 上着のポケットに大切にしまい、代わりにみきちゃんへのプレゼントを取り出す。



「みきちゃん、誕生日おめでとう。僕からのプレゼント受け取ってください」



「ありがとう! 開けてみてもいい?」



「もちろんいいよ」



 ラッピングした袋から優しく割れ物を扱うかのように取り出す彼女。中身を見た瞬間に彼女が目の色を輝かせてこちらに顔を向ける。



「ねねね! これってさ、海と同じイヤホンだよね!!」



「そうだよ、喜んでもらえたかな?」



「も、もちろん。嬉しいに決まってるよ!イヤホンまでお揃いなんて・・・」



 僕たちの歩いている道の街灯が点灯し始める。光に照らされた彼女の横顔は、今にも夜に溶けて消えてしまいそうなくらい美しいものだった。