部屋に入ると、想太と一花が持ってきたお菓子や飲み物がたくさんテーブルの上に広げられていた。これだけでもなかなかの金額がしたのではないかと思うほどの量。
一花がみんなのコップにコーラを注ぎ、僕は先ほど父から渡されたケーキをテーブルの真ん中に置き、ライターで蝋燭に命を灯す。
ムードを出すために部屋のカーテンを閉め切り一切の光を遮断する。日中なので微かに光が部屋に入り込んでくるが気にしても仕方がないので、そのまま準備に取り掛かる。
みんなを見渡し"せーの”の掛け声で声をそろえ歌い始める。三人の声が重なり、一つの歌へと変化してみきちゃんを祝福する。
声が重なってはいるものの音程はバラバラ。特に想太の音程はかなりひどい。
歌い終えると彼女が口いっぱいに溜めた空気を一気に吐き出し、蝋燭の火が風に揺られ、静かに命を落とすかのように消えていく。
「それではお待ちかね! プレゼントターイム!」
想太が部屋中に響く声で高らかに宣言するのにつられ、各々がみきちゃんへのプレゼントを準備し始める。
「じゃあ、トップバッターは俺で、次がいち、ラストが海な! ラストはプレッシャーかかるから俺は嫌だ!」
「ずるいな。それに余計にプレッシャーをかけるなよ・・・」
笑う想太と一花の横でまだかまだかとソワソワしている様子の今日の主役。みんなが何をみきちゃんにプレゼントするのか少しだけ気になっている自分もいる。
「希美、誕生日おめでとう! 俺からはこれをプレゼントするよ!」
想太の手には予約殺到中のバームクーヘンのお店のローマ字が綴られている紙袋。確か、最近ここら辺にオープンしたばかりなのに、snsでバズり始めたのがきっかけで、今では若いカップルや夫婦にも大人気なお店となっている。
購入することがかなり困難なことから、人々からは購入できたら幸せが長く続くと噂されているらしい。
その証拠に、想太が紙袋から取り出した高そうなガラスの入れ物の表面には英語でこう記載されている。
『I hope that happiness will forever continue for you』と。
「これからもずっとあなたに幸せが続きますように、か・・・」
素敵な言葉とデザインに圧倒されてしまい言葉が出てこなくなる。それに想太は意外とロマンチストなのかもしれない。もちろんいい意味で。
「これ、snsで見たやつだ! すごい!よく買えたね・・・食べるのが勿体無いんだけど」
「希美は甘いものが好きだからいいかなって。それにバームクーヘンが作られる時みたいに、俺らの思い出もこれからどんどん何重にも増え続けていけばいいなと思って選んでみたんだ」
確かにバームクーヘンを作るには何層も焼いては塗ってを繰り返す。それにバームクーヘンの別名は"木のケーキ"
樹木の年輪のように何層にも生地が重なっていることから、二人で幸せを重ねていくという意味合いもあるらしい。
なんてロマンチックなんだろうか。男の僕でも、うっとりとしてしまいそう。
「すごい、嬉しいよ! ありがとう! あ、あの開けてもいい?」
「おう! もちろんいいぞ!」
ガラスのケースを慎重に持ち上げると、部屋中が甘い柔らかな匂いに包まれる。匂いを嗅いだだけで今まで食べたバームクーヘンとは違うというのが、すぐにわかるほど。
「希美、二人で幸せにな・・・」
"バシンッ"思いっきりみきちゃんに頭を叩かれる想太。プレゼントを渡した側で少し可哀想にも思えるが、これが想太のキャラなので仕方がない。
それにしてもどうして叩かれたのだろう。僕にはその理由がわからない。
「本当に想太は一言が余計!!」
一花がみんなのコップにコーラを注ぎ、僕は先ほど父から渡されたケーキをテーブルの真ん中に置き、ライターで蝋燭に命を灯す。
ムードを出すために部屋のカーテンを閉め切り一切の光を遮断する。日中なので微かに光が部屋に入り込んでくるが気にしても仕方がないので、そのまま準備に取り掛かる。
みんなを見渡し"せーの”の掛け声で声をそろえ歌い始める。三人の声が重なり、一つの歌へと変化してみきちゃんを祝福する。
声が重なってはいるものの音程はバラバラ。特に想太の音程はかなりひどい。
歌い終えると彼女が口いっぱいに溜めた空気を一気に吐き出し、蝋燭の火が風に揺られ、静かに命を落とすかのように消えていく。
「それではお待ちかね! プレゼントターイム!」
想太が部屋中に響く声で高らかに宣言するのにつられ、各々がみきちゃんへのプレゼントを準備し始める。
「じゃあ、トップバッターは俺で、次がいち、ラストが海な! ラストはプレッシャーかかるから俺は嫌だ!」
「ずるいな。それに余計にプレッシャーをかけるなよ・・・」
笑う想太と一花の横でまだかまだかとソワソワしている様子の今日の主役。みんなが何をみきちゃんにプレゼントするのか少しだけ気になっている自分もいる。
「希美、誕生日おめでとう! 俺からはこれをプレゼントするよ!」
想太の手には予約殺到中のバームクーヘンのお店のローマ字が綴られている紙袋。確か、最近ここら辺にオープンしたばかりなのに、snsでバズり始めたのがきっかけで、今では若いカップルや夫婦にも大人気なお店となっている。
購入することがかなり困難なことから、人々からは購入できたら幸せが長く続くと噂されているらしい。
その証拠に、想太が紙袋から取り出した高そうなガラスの入れ物の表面には英語でこう記載されている。
『I hope that happiness will forever continue for you』と。
「これからもずっとあなたに幸せが続きますように、か・・・」
素敵な言葉とデザインに圧倒されてしまい言葉が出てこなくなる。それに想太は意外とロマンチストなのかもしれない。もちろんいい意味で。
「これ、snsで見たやつだ! すごい!よく買えたね・・・食べるのが勿体無いんだけど」
「希美は甘いものが好きだからいいかなって。それにバームクーヘンが作られる時みたいに、俺らの思い出もこれからどんどん何重にも増え続けていけばいいなと思って選んでみたんだ」
確かにバームクーヘンを作るには何層も焼いては塗ってを繰り返す。それにバームクーヘンの別名は"木のケーキ"
樹木の年輪のように何層にも生地が重なっていることから、二人で幸せを重ねていくという意味合いもあるらしい。
なんてロマンチックなんだろうか。男の僕でも、うっとりとしてしまいそう。
「すごい、嬉しいよ! ありがとう! あ、あの開けてもいい?」
「おう! もちろんいいぞ!」
ガラスのケースを慎重に持ち上げると、部屋中が甘い柔らかな匂いに包まれる。匂いを嗅いだだけで今まで食べたバームクーヘンとは違うというのが、すぐにわかるほど。
「希美、二人で幸せにな・・・」
"バシンッ"思いっきりみきちゃんに頭を叩かれる想太。プレゼントを渡した側で少し可哀想にも思えるが、これが想太のキャラなので仕方がない。
それにしてもどうして叩かれたのだろう。僕にはその理由がわからない。
「本当に想太は一言が余計!!」