「お邪魔しまーす!」



 声を合わせて靴を脱ぎ、先に僕の部屋へと向かっていく二人。何回も来ているのでもう僕の家は熟知している。



 "さ、問題はここからだ"と身を構える。まだ一人僕の前で立ち止まっている人がいる。



「ねぇ海。今の話嘘でしょ」



 やはり彼女だけは一筋縄ではいかない。付き合いが一番長い分、僕が嘘をつく時の癖を知っているらしい。



「ほ、本当だよ」



 彼女の目を一切見ないで両手の指を絡ませる。



「あのね、私が海の癖を知ってるって前に言ったけど、目を合わせないことじゃないからね・・・その手だからね?」



 てっきり僕は目を合わせずに話していることが嘘をつく時の癖だと思い込んでいたらしいが、実際は違ったようだ。



「え、手・・・?」



 全くなんのことか分からず視線を彼女の目から自分の手へと移す。



「そう、その手。海はね、嘘をつくと必ず両手の指を絡ませて、落ち着きなく手を動かすの」



「あ、本当だ・・・無意識にしてた」



 どうやら彼女が言う、僕が嘘をつく時にする癖は当たっているようだった。これ以上彼女に嘘が通るわけがないと思い、本当のことを告げようかと口を開く。



「あ、あのさ・・・」



「お、希美ちゃん久しぶりだな!」



「海パパ・・・久しぶり!!!」



 みきちゃんは僕の両親のことを自分の親のように思っているので、久しぶりにみた僕の父を見て気分がよくなったようだ。



「実はな・・・」



 みきちゃんの耳元でこっそり耳打ちをする父。"またこのパターンか"と思っていると、すぐさまみきちゃんは唇を噛み締めて僕の部屋へと走っていってしまった。



 父さんまで彼女に何を吹き込んだのだろう。



「なんて言ったの?」



「さぁーな。それは秘密だよ」



 正直父さんには助けられたが、それ以上に父さんが彼女に何を言ったかのほうが気になって仕方がなかった。