「今日、家で希美ちゃんの誕生日会するんだろ?父さん、気を利かせてケーキを作っておいたからみんなで食べな」



「手先器用だもんね父さん。それと何から何までありがとう・・・」



「別に父さんは何もしてないぞ」



 照れ臭かったのかルームミラー越しに見る父は鼻の下に指を当て笑っていた。



 頼もしく広がる父の大きな背中。僕はいつかこの大きな背中を越えられる日が来るのか。僕はこの二人の間に生まれることができて本当に幸せだと思う。



 "ありがとう、二人とも"心の中で二人に感謝の気持ちを伝える。もちろん届くことはなかったが、二人からは小さな"クスッ"という笑い声が聞こえた気がした。



 家に着くと既にパーティーの準備はされており、あとはみきちゃん達を待つだけの状態になっていた。



「え、もしかしてこれも二人が・・・」



 "ピンポーン"チャイムが鳴る音が僕ら家族三人の耳に届く。



「ほら、みんなを迎えに行っておいで。それとあまりはしゃぎすぎるのはダメよ」



 "あぁ二人には頭が上がらないや"どうやら僕は昨日から涙腺が脆くなったらしい。指先で目元を拭いでから、玄関の扉に手をかけそっと開く。



「おーい、海。なんで昨日連絡したのに何も返事がなかったんだよ〜」



「そうよ! 何かあったんじゃないかって心配したんだから!」



 扉を開けた途端に想太と一花が僕の元へと詰め寄ってくる。その後ろからひょこっと顔を覗かせているみきちゃんも。



「ご、ごめん。昨日はじいちゃんの家に泊まりに行っててさ。田舎すぎて電波がね・・・」



 倒れたことをバレるわけにはいかなかったので、咄嗟に相馬先生を祖父と偽り話をでっち上げる。父でも祖父でもないが、強ちこの表現は間違っていなくもない。なにせ僕にとって第二の父なのだから。



「なんだ、そんなことかよ。でも今どき電波が通じない場所ってあるんだな」



「そ、そうなんだよ。それくらい田舎でさ」



 確信的なところを突かれ少し焦ってしまうが、バレてはいないはず...