病院の玄関へ向かうと、白衣姿の先生が僕を待っているかのように立ち竦んでいた。



「海くん、半年後にまた検診で会えることを楽しみにしているよ。高校生は半年もあればまた顔つきや体格が変わってくるものだから、次また君と会うのが待ち遠しいよ」



「僕もです先生。先生はきっと半年では何も変わってはいないでしょうが・・・」



「ちょっとした冗談が言えるようになったじゃないか」



 昔に比べ皺の増えた顔で白い歯を見せながら豪快に笑う先生。僕は多くの人に支えられて、そして生き続けてほしいと思われているのだと改めて実感した。



 先生に母と一緒にお辞儀をして病院の自動ドアを抜ける。目の前にはお店のエプロンをつけたままの父の姿。



「なんだ、意外と元気そうじゃないか」



「父さんこそ元気そうだね・・・」



「あぁ、当たり前だろ。父さんが元気なかったら誰がお店を守るんだよ!」



 そう強がっている父さんだったが、いつもより顔は疲れ切っており、目には誰が見てもわかるほどの黒ずんだくま。



 仕事をして疲れていたのに僕が心配で眠ることができなかったのだろう。それでも僕に気を遣わせないように明るく笑う父の顔を見ると、無性に泣きたくなる。



 隣に母さんがいなかったら今頃僕は泣いていた。でも、どこか僕の心の奥底から安心させてくれるような、包み込んでくれる微笑みだった。