一時間くらい歩いたところで駅前の電気屋さんに辿り着く。今日は気分が良かったので公共交通機関を使わずに徒歩で駅前まで来てしまった。少し息切れを起こしているが、これくらいなら心臓の心配はいらないだろう。



 みきちゃんにプレゼントするものは僕が今耳につけているこのイヤホン。電気屋さんの中に入り、イヤホンが売っている売り場を探索する。



「あ、あった・・・」



 値段は約三万円とそこそこ高いが、家業の手伝いをしてお金は少しもらって貯めていたので、そこまで痛い出費ではない。もちろん大切な幼馴染へのプレゼントなので、あげるならしっかり長く使えるものをあげたい。



 去年の僕の誕生日で彼女は僕に、手編みのマフラーと高そうなネックレスをプレゼントしてもらった。



 彼女曰く、中学生最後の誕生日なのでいつもよりも高めのプレゼントにしたらしい。正直彼女からのプレゼントならば、どんなものでも嬉しいので高くなくてもいいと思い、彼女に伝えてみたが『いいの!』と一蹴されてしまった。



 イヤホンを片手にレジに向かう。音楽を止めて、イヤホンを耳から外す。いくら外部音取り込みで店員さんの声が聞こえるからといって、イヤホンをしたまま会計をするのは失礼だと思いポケットにしまう。



 会計を無事済ませ、再び耳にイヤホンを装着し音楽をかけ直す。あとは家に帰ってこのプレゼントを自分でラッピングするだけと思い電気屋さんを後にする。



 電気屋さんに入店する前に比べたらいくらかは雨足が弱まった気がする。水滴がついた傘を開き、水を吸い込んで黒くなったアスファルトの上を歩き始める。