僕の幼馴染の春川希美(はるかわきみ)は、容姿端麗・文武両道と勉強しか取り柄のない自分と違って、まさに誰もが憧れる高嶺の花のような存在。



 もちろん高校入試は県内トップの進学校を一位で合格。簡単に言えば、県内に住む同学年の中で1番頭が良いということ。入試の点数も満点だったのだから。



 先週行われた入学式では首席として新入生代表の挨拶をしていた。



 その結果、学校中で話題の人となり、入学してまだ一週間なのにもかかわらず、全学年にまで名が知れ渡っているみたい。



 噂によると他校にまで彼女を知っている人がいるとか...



 そんな彼女の隣を歩くのは、少し勇気がいる。側から見れば全く釣り合っていないのだから。



 花に例えるなら、綺麗に咲き誇る真っ赤な薔薇とその辺の道端に咲いている名前の知らない雑草くらいの違い。



 でも彼女は小さい頃からずっと僕の隣にいてくれるのは、なぜなのかちっとも分からない。



 きっと世話の焼ける弟とでも思っているに違いない。



「ほら海!準備できたら学校行くよ!」



「うん。母さん行ってきます」



「おばさん、行ってきます!」



「二人とも気を付けて行くのよ。希美ちゃん、海のことよろしくね」



 "はぁ、本当に余計なお世話だ"レジからこちらを見送る母の顔は嬉しそうだった。



 みきちゃんが隣にいてくれるから安心なのだろう。



 学校までは徒歩二十分と割と近いので、普段から歩いて登校している。自転車なら五分くらいなのに、生憎僕は自転車に乗ることができない。



 自転車の運動量ですら、僕の心臓は保つことができない可能性があるらしい。本当に不便な心臓。



 隣を歩いている彼女は、ただ僕が自転車に乗ることができないのだと思っている。本当はそんな理由ではないのに...