「はぁ〜、やっとお昼だね！お腹がぺこぺこだよ〜」



　今日は四人揃って中庭でお昼を食べる予定。授業の合間の休憩時間に想太に連絡はしておいたから準備はバッチリなはず。



「それじゃ、中庭に行こうか」



「うん！」



　笑顔の彼女を見ると、僕まで嬉しい気持ちに包まれる。それほど彼女の笑顔は周りを自然と笑顔にするのだろうか。まるで、太陽そのもののようだ。



　二人並んで目的の中庭まで足を進める。中庭は当然一階にあるので少し歩かなくてはならない。



　その間にもクラスメイトや同級生、先輩たちとももちろんすれ違う。すれ違うみんなの視線の先にはもちろん彼女の姿。隣にいる僕などまるで、最初から見えていないかのような空気みたいな扱い。



　少し悲しいが小さい頃から僕はいつもみきちゃんの影に隠れていたので、今更目立ちたいとは思わない。むしろ目立たず静かに卒業まで過ごしていたい。



　中庭に着くと既に他の生徒たちが、お昼休憩をそれぞれ有意義に過ごしていた。僕たちの学校には中庭があり、これがなんとも広く木々に囲まれているため自然が豊かで空気が美味しい。



　僕はこの中庭と図書室がこの学校で好きな場所だ。中庭にいると自然と心が落ち着く気がする。



　上を向くと雲一つないほどの青空が、僕らを包んでいるかのように広がっている。鳥たちが優雅に空を飛んでいる姿を見ると"自由でいいな"と思ってしまうのは僕だけではないだろう。



　人ならば一度は鳥のようにあの大空を羽ばたいてみたいと思うに違いない。だから、毎年夏頃にテレビで『鳥人間コンテスト』というものがあるのだと思う。



　僕には大学生になっても参加することはできないだろうけれど、やはり空を飛ぶというのはロマンが詰まっている気がする。



　飛行機とはまた違い、自分の肌で体で風や温度、日差しを感じることができるなんて、絶対に気持ちがいいに決まっている。



「おーい、ごめん待たせたよな」



　ようやく想太と一花もやってきたみたいで、またいつもと同じように四人で弁当を広げる。



　中庭の木から千切れてしまった葉っぱたちが、先に空へと飛び立って行った仲間の後を追うように、風と共に青く広がる大空へと旅立っていく。