「この時間に登校することってなかなかないから新鮮だね!」



 隣で楽しそうに笑っている彼女だが、僕たちは遅刻をしているので、僕は彼女みたいにこの状況を楽しむことができない。



 僕以外の人たちはみきちゃんと同じように楽しむのだろうか。僕は遅刻をしたということでただでさえ頭がいっぱいなのに...



 これが人生で初めての遅刻。汚点とまではいかないが、かなり後悔はしている。


「あー! また難しいこと考えてるでしょ! 海ママが電話してくれたんだからもう気にしないの!」



「で、でも・・・」



「でもじゃない! わかった? 返事は!」



「は、はい」



 こうなってしまったら誰にも止めることはできないので、大人しく引き下がることが賢明な判断。



 長年培ってきた僕の感覚が危険信号を発している。もしここで返事をしなかったら...考えるだけで怖い。今日一日、不機嫌になってしまうのは確実。それだけは絶対に避けたい。



「わかったならよし!」



 どうやら大丈夫だったらしい。小学生の時に一度大喧嘩をしてしまったことがあり、その時は一週間口を聞いてもらえなかったような。原因は忘れてしまったが、それ以来彼女を怒らせてはいけないのだと察知した。



 普段は優しい彼女だが、僕のこととなると彼女は鬼のようになってしまう。他の人なら許していることでも僕だけにはやたら厳しい。怖いけれど、これもみきちゃんの優しさなのだろう。



 大切な友人に怒ることができるのが、本当の優しさなのではないかと最近では思う。



「昨日の夜、本当に雨降ったんだねー」



「みたいだね。水溜まりだらけだ」



 昨日の夜、雨が降ったためか道路は水溜まりばかりで少し歩きにくい。水溜まりに反射している空は雲一つないほどの晴天。太陽の光を反射しているのか道路の水溜まりがキラキラとしていて若干眩しい。