「どうする?このまま歩いて行ったら遅刻するね」



「ごめん、僕準備に時間がかかるから先に行ってて」



 本当は準備なんて一分もあれば終わるが、嘘をつかなければ走るという選択肢になりそうなので、早めにそうならないように理由をつけておく。



「え、海いつも準備・・・ま、いっか! たまには遅刻するのもありだね!」



 なぜかみきちゃんまで遅刻をするみたいな言い方で思考が一瞬フリーズする。



「みきちゃんは今から急ぐんだよね?」



「え、海と一緒に行くけど?走って汗かきたくないし〜」



「僕たちまだ高校生になったばかりなのに、今から遅刻ってこの先不安しかないね」



「確かに!私はちゃんといつも通り海のところに来たんだけどなー」



「ぼ、僕のせいっていうの!?」



「じゃあ、誰が寝坊したのかな?」



「は、はい。僕です。ごめんなさい」



 もう遅刻には変わりないので、急がずにゆっくりと登校する準備をする。



 "あれ、みきちゃんはなんでいつも通りに僕の家に来たのに起こしてくれなかったんだろう"と頭をよぎるが考えても仕方がないので忘れることにした。



 顔を洗おうと洗面所へ向かい、鏡で自分の顔を見つめる。昨日は寝過ぎたせいか少し顔が浮腫んでいるような。



 自分を見つめていると何やら僕の頬らへんの鏡がテカテカしているように見える。



 鏡を指でなぞったり、ティッシュで拭いたりしても汚れが落ちる気配がない。諦めつつ顔を洗いに来たことを思い出し、蛇口を捻って水を出す。掌を合わせ水を溜めて一気に顔に当てる。 



 冷たい...一瞬で目が覚めていく。ぼんやりとしていた思考回路が、一気に活性化される。



 近くにあったタオルで顔を丁寧に撫でるように拭き、鏡を見ると先ほどよりもキリッとしている自分の顔。