「じゃーね！　また明日学校でねー！」



　一花の声で僕たちはそれぞれ違う道へと足を進める。想太と一花の家は僕たちの家からさらに二十分ほどかかるのでだいぶ遠い。二人とも自転車通学なのでそこまで大変というわけではなさそうだが。



「また明日〜」



　あと五分も歩けば僕たちの家が見えてくる。最初はあまり乗り気じゃなかったが、いざお花見をしてみると意外と楽しいものだ。もしかしたらお花見が楽しいのではなく四人で話すのが楽しかったのかもしれない。



「海は小学校の先生になりたかったんだねー」



「え、うん。どうしたの？」



「私も学校の先生になろうかなー。海と同じ学校の先生に！」



　冗談を言っているようで本気にも聞こえる声のトーンに困惑してしまう。



「えええ、なんで急にそうなるの！」



「だって、海が側にいてくれるって言ったんじゃーん！　なら、私も学校の先生！」



　果たしてそんな簡単に決めていいものかと思ってしまうが、内心はそう言ってもらえて嬉しい気持ちもあり複雑。



　"ドキッ"またこの音だ。胸に手を当て心臓の鼓動を掌で感じる。至って普通の鼓動間隔。



　以前は心臓音が耳に聞こえてくることなんてなかったのに...少々不安が膨らむ。



「ま、いいと思うよ」



「嘘だよー。大人になってまで海の面倒見ないといけないなんてごめんだよ！」



　"そうだよな。いつまでも僕の側にいてくれるわけがないよな"心臓の鼓動音が小さくなり、聞こえなくなってしまう。



「僕は大人になっても側にいたいけどね・・・」



　うっかり静かな夜の住宅街でボソッと呟いてしまう。



「え・・・」



　どうやら彼女に聞こえていたらしく、勢いよく反対に顔を逸らされてしまった。そのまま家の前に着き彼女は黙って家の中へと入って行く。



　完全に引かれてしまったのだと思うと、急に恥ずかしくなり今すぐに穴に入りたい気持ちに襲われる。