「そんなことがあったんだね海も。知らなかったよ。みんなは夢があっていいなー」
「希美ちゃんは夢ないの?」
「うん。これといってしたいこともないし、何かに憧れがあるわけでもないんだ。だから今みんなの話を聞いて少しだけ不安になっちゃった」
顔は笑っているが何処か無理をしているそんな笑顔。多分本気で自分のしたいことが見つけられず、みんなに置いていかれるのではと心配しているのだろう。
彼女の文武両道ぶりを見れば誰でも将来に不安を抱いているなんて全く思いもしないはず。それでも当の本人はなりたい夢、自分の目標を見つけられずに焦っている。周りに置いていかれるのは辛い。
声をかけたいが、声を出そうとすると喉の奥で何かが詰まったように声が出てこない。きっと僕はビビっている。そう簡単に声をかけていい問題ではないのだと本能的に感じてしまっている。
本気で悩んでいる人に"大丈夫だよ"と声をかけたところで本人に届くことはない。そんな無責任な回答をするくらいなら黙っていた方がまだマシだ。一花も多分それを感じ取り黙ってしまっている。
「なぁ、希美」
張り詰めた空気の中想太の声が沈黙を破っていく。それに合わせたかのように歩いていたみんなの足がぴたりと止まり、影が横一列に並ぶ。
「夢があることってそんなに偉いことなのか?」
「え?」
「だってよ、夢があるのは確かにいいことかもしれないけど、必ずしも夢が叶うわけでもないだろ?俺だって今は医者になりたいけど、もしかしたら急に弁護士になりたいとか思う日が来てもおかしくない。夢を追い求めて日々頑張るのもあり。だけどさやっぱり今、自分にできることを頑張れないやつはいくら夢があっても俺は意味がないと思うな」
「そうなのかな・・・」
「希美が今、不安な気持ちも少しはわかる。この先やりたいことが見つかるなんて無責任なことは言わない。とりあえず、今の希美にできることを後悔のないように精一杯頑張ればいいんじゃないの? その方が気持ち的にも楽でしょ!」
力んで強張っていた筋肉がスッと抜けていくようにみきちゃんの肩が徐々になだらかに落ちていく。
「そうだよね、今は目の前のことをだよね。そしたらいつかは見えてくるかな・・・」
未だに不安な色を含んだ瞳の視線がこちらに向かって伸びてくる。彼女は僕に答えを求めているのだと。
「ぼ、僕が必ず側にいるから。だから安心してゆっくり見つけていこう。いつだって僕はみきちゃんの味方だから・・・」
正直こんな言葉でよかったのかと言ってから後悔してしまう。恐る恐る彼女の様子を伺うと先程までとは打って変わって優しい笑顔をした彼女。
「ありがとね。私を励ましてくれて、だいぶ気持ちが楽になった気がする」
その言葉を聞いた途端僕の肩もゆっくりと力が抜けていくのが感じられた。気づけば辺りは既に闇に包まれ街灯の光が僕たちの足元を点々と照らしている。
光があまりにも弱々しく、今にも消えてなくなりそうなほど乏しい命のような光だった。
「希美ちゃんは夢ないの?」
「うん。これといってしたいこともないし、何かに憧れがあるわけでもないんだ。だから今みんなの話を聞いて少しだけ不安になっちゃった」
顔は笑っているが何処か無理をしているそんな笑顔。多分本気で自分のしたいことが見つけられず、みんなに置いていかれるのではと心配しているのだろう。
彼女の文武両道ぶりを見れば誰でも将来に不安を抱いているなんて全く思いもしないはず。それでも当の本人はなりたい夢、自分の目標を見つけられずに焦っている。周りに置いていかれるのは辛い。
声をかけたいが、声を出そうとすると喉の奥で何かが詰まったように声が出てこない。きっと僕はビビっている。そう簡単に声をかけていい問題ではないのだと本能的に感じてしまっている。
本気で悩んでいる人に"大丈夫だよ"と声をかけたところで本人に届くことはない。そんな無責任な回答をするくらいなら黙っていた方がまだマシだ。一花も多分それを感じ取り黙ってしまっている。
「なぁ、希美」
張り詰めた空気の中想太の声が沈黙を破っていく。それに合わせたかのように歩いていたみんなの足がぴたりと止まり、影が横一列に並ぶ。
「夢があることってそんなに偉いことなのか?」
「え?」
「だってよ、夢があるのは確かにいいことかもしれないけど、必ずしも夢が叶うわけでもないだろ?俺だって今は医者になりたいけど、もしかしたら急に弁護士になりたいとか思う日が来てもおかしくない。夢を追い求めて日々頑張るのもあり。だけどさやっぱり今、自分にできることを頑張れないやつはいくら夢があっても俺は意味がないと思うな」
「そうなのかな・・・」
「希美が今、不安な気持ちも少しはわかる。この先やりたいことが見つかるなんて無責任なことは言わない。とりあえず、今の希美にできることを後悔のないように精一杯頑張ればいいんじゃないの? その方が気持ち的にも楽でしょ!」
力んで強張っていた筋肉がスッと抜けていくようにみきちゃんの肩が徐々になだらかに落ちていく。
「そうだよね、今は目の前のことをだよね。そしたらいつかは見えてくるかな・・・」
未だに不安な色を含んだ瞳の視線がこちらに向かって伸びてくる。彼女は僕に答えを求めているのだと。
「ぼ、僕が必ず側にいるから。だから安心してゆっくり見つけていこう。いつだって僕はみきちゃんの味方だから・・・」
正直こんな言葉でよかったのかと言ってから後悔してしまう。恐る恐る彼女の様子を伺うと先程までとは打って変わって優しい笑顔をした彼女。
「ありがとね。私を励ましてくれて、だいぶ気持ちが楽になった気がする」
その言葉を聞いた途端僕の肩もゆっくりと力が抜けていくのが感じられた。気づけば辺りは既に闇に包まれ街灯の光が僕たちの足元を点々と照らしている。
光があまりにも弱々しく、今にも消えてなくなりそうなほど乏しい命のような光だった。