「かーい!いい加減起きないと遅刻しちゃうよー」



 もう何度も聞き慣れてしまったセリフ。"頼むからもう五分だけ寝かせてくれ"



 ま、彼女に伝わることはないけれど...



「あー、起きないのね。置いて行っちゃうからねー」



「わかったよ、起きるから。それよりなんで高校生になってまで人の家に勝手に入ってきて、僕を起こしにくるのさ」



 "いくら幼馴染といえど思春期真っ只中の男子だぞ!"と心の中で思うが、彼女は全くそのようなことを気にしない性格なので考えるだけ無駄。



「だって、(かい)のこと放っておいたら学校も行かないでずっと寝てそうじゃん」



 失礼なやつ。流石に僕でも学校の日くらい分かるし、なにも一人暮らしではないのだから最悪母親が起こしてくれるっていうのに。



「海!希美(きみ)ちゃんが迷惑してるでしょ。早く起きなさい」



 下から母の忙しそうな声が聞こえてくる。母までもが彼女の味方なので、最近は僕に自由がないのではと思えてくる。