「・・・か、海ってば!聞いてる?」



「あぁ、ごめん。気が付かなかった」



「もうしっかりしてよね。それよりさ、あの二人本当に仲がいいよね。ちょっと彼氏彼女の関係が羨ましくなっちゃうよ」



「みきちゃんは彼氏作らないの?モテてるんだからすぐに作れそうだけど・・・」



「え、い、いいの。私は彼氏なんていらないもん。私に彼氏ができたら、登下校一人になっちゃうよ? 寂しいでしょ?」



 彼女の瞳がまるで消えそうな蝋燭のように揺らいでいる。



「確かに今までずっと隣にみきちゃんがいたからね、寂しくなるよ。でもね、僕はみきちゃんには笑っていてほしんだ。僕にとってみきちゃんは大切な人だから。その笑顔が守れるなら僕は寂しくても平気だよ・・・強がってるけど、これが本当の気持ち」



 この笑顔を僕が守れるならいつまでも側に寄り添っていたい。でもそれは叶わない夢だ。運動しなければ大丈夫とは言われているが、絶対とは言い切れない。



 今日突然心臓が止まって死ぬかもしれないし、明日死ぬかもしれない。それは誰だってこの世界では同じかもしれないが、僕にはこの心臓があるのを忘れてはいけない。いつか彼女を泣かせて、この世に置いていくのだけは嫌だ。

 

 僕が守れないなら、誰かが彼女の笑顔を守ってほしい。僕には、守ることができないその笑顔を。



「海・・・私は今とても幸せだよ。海がいるからいつも笑っていられるの。だからさ、いつまでも・・・」



「おーい、片付け終わったから帰ろうぜ!」



 想太の大きい声に遮られてしまい最後に何を言ったのか聞き取れなかった。



「みきちゃん、最後なんて言ったの?」



「さーね! ひ・み・つだよ〜!」



 秘密と言われ余計に気になってしまったけれど、しつこく聞くのは野暮なのでそっとしておく。



 この時みきちゃんに聞き返していたら、僕たちの関係も今とは違ったものとなっていたのだろうか。