「何してるの海!」



 三人の声が合わさり公園内に響き渡る。あまりにも大きな声だったので、何事だと何人かの人がこちらを見てきたが、お菓子をばら撒いただけだったのでため息まじりに迷惑そうにしているように見えた。



「い、いやみきちゃんがお菓子を食べるの控えるっていうからさ、びっくりしちゃって・・・ごめんなさい」



「そ、そんなに私って食いしん坊に見えるの!?」



「女の子にこういうのもなんだけど・・・ずっと前からそう思ってました・・・」



 徐々にみきちゃんの瞳孔が開いていくのが目に見えてわかった。"やはり女の子に食べ過ぎだというのはまずかったのか"と反省するがもう手遅れ。



「海は私が太ったら、嫌いになる?」



 なぜ僕にそんなことを聞いてくるのだろう。そんなことで嫌いになれるはずがないけれど...むしろありえない。



「そんなことで僕はみきちゃんを嫌いになったりなんてしないよ」



「でも、食べすぎたら太っちゃうしなー」



「ならさ、食べた分ランニングでもしたらいんじゃね?」



「確かに希美ちゃん運動神経いいから走るのありだね」



 想太と一花は二人とも中学の頃は陸上部だったので、食べたらその分走るという発想になるのだろう。それに比べ僕は運動ができないので、我慢をするという選択肢しか頭の中にはなかった。



 それよりもこの話の流れは個人的にまずい気がする。もし、みきちゃんが"走る!"となったら僕が誘われるのはもはや必然的。そうなってしまってからではもう手遅れなので、うまく話を逸らそうと考えるが何も思い浮かんでこない。



 額から冷たい汗が頬をたどり顎から一雫こぼれ落ちる。手を握りしめているが、緊張で手汗を尋常じゃないほどかいている。手を洗ったかのようにびっしょり湿っていて不快感が募る。