自分の教室の前に着き、扉を開けるとみんな静かに席に座りながら私を見てくる。



「みんな、おはよう！」



　できる限りの笑顔を顔に貼り付けて、子どもたちの方を見て挨拶をする。



「きみせんせー！　おはよう！」



　みんなが声をバラバラにしながら、私に挨拶を返してくる姿はなんとも可愛らしい。いつまでも成長しないでほしいと思うも、それはそれでつまらないなと思い返してしまう。



　彼らの成長を見守るのが、私の仕事であるのだから、将来この子たちがどんな大人になっていくのかが楽しみで仕方がない。



　教卓の前に立ち一人一人出席を取っていく。時代の流れなのだろうか、苗字は読めても名前が読めないことが多くて、最初は本当に苦労した。ふりがなが振られていても、全ての物に振られているわけではないから大変だった。



　今はこのクラスの担任になって一週間近く経ったので、間違えることは減ってきたが、それでも間違えてしまうこともある。



　珍しい名前ばかりで時代の流れを感じてしまう。



「あのね、みんな。明日から新しい子がこのクラスに来るから、みんな仲良くしてあげてね」



　みんなの瞳に輝きが宿る。一年生からしたら転校生というのは物珍しいものだから当然の反応。



「えー、あたらしいおともだちくるのー！」



「どんなこかな、はやくあいたいね」



「せんせー、おとこのこ？　おんなのこ？」



　口それぞれに声を上げる彼ら。早く会いたくてたまらないのが、顔を見ただけでも伝わってくる。



「それがね、先生もまだ会ったことがなくてね。今日、みんなが帰った後にその子に会うの」



　『えー、ずるいー』という彼らに笑いかけようと心がけながら、今日も授業を始めていく。