「おはようございます」



 職員室に入るとコーヒーの匂いが中から溢れ出てくる。その空気の中をかき分けながら、自分の席に荷物を静かに置く。



 先生方も朝は眠たいのだろう。だから朝から学校でカフェインを摂っているのかもしれない。私はコーヒーが飲めないので、その気持ちはわからないけれど。



 彼もコーヒーが飲めなかったことをふと、思い出してしまう。飲めないことは同じだが、私はただ単に苦くて飲めないお子様舌なのだ。



「おはようございます、春川先生。昨日はお墓参り出来ましたか?」



「はい。それに思いもよらない出会いがありました。まるで、高校生の頃の海を見ているようでした」



「そうですか。それはよかったですね。ところで、話が変わりますが、今日から登校してくる予定だった、昨日話した子いるじゃないですか?」



 そういえば、今日から新しい子が来るのを忘れていた。昨日は色々と驚くことばかりでそちらに意識が向いていなかった。
 


「あぁ、はい。どうかしたんですか?」



「それがですね、その子がどうしても一度担任の先生とお話ししてから授業に参加したいらしくて・・・だから今日は授業は受けずに放課後、春川先生に会いに来るそうなので、よろしくお願いしますね」



 なかなか自由な子だなと思いつつ、一年生で転校をしてきたのだから無理もないかもしれない。



「わかりました。どんな子が来るのか楽しみにしておきます」



「そう言ってもらえてよかったですよ」



 教頭先生は笑顔のまま自分の席へと戻っていく。私はこれから自分の教室に行き、出席をとりながらすぐに一時間目の授業をしないといけないので、その準備をさっさと済ませて職員室を出る。