「そうですね。僕もいつかまた海さんに出会える時、恥じることのないよう背一杯生きてみようと思います。そして、会えた時は笑顔で『ありがとうございました』と伝えたいです・・・」



「そうだね。それがいいよ。ところで、どうして私の名前を知っていたの?」



「あー、それは希美さんと海さんの話は僕の高校で伝説として受け継がれていますし、僕が毎年ここに来るたびたまにですけど、想太さんと一花さんに出会うので、その時二人のお話を聞かせてもらっています」



 色々とツッコミどころが多すぎて何から聞けばいいのかわからなくなる。



「え、まず伝説って何!? あと想太といっちゃんもくるの?」



 聞きたいことが多すぎて一度に聞いてしまった。



「伝説っていうのは、お二人は県内トップのうちの高校を一位、二位で合格し、おまけに希美さんに関してはずっとトップに居続けた生徒会長兼女王様みたいな感じの伝説が・・・想太さんと一花さんも毎年ここに来ているみたいですよ?時間がいつもバラバラなので僕もたまにしか会えませんが」



 もう恥ずかしすぎて彼の顔を見ることができなかった。もう卒業して五年近くも経つのに、未だに名が知られているなんて...それに、私も毎年ここに来ているが、一度も二人に出会ったことはない。



 これからもここに来るので、その時に会えればいいかもしれない。二人とも今は大忙しだから。



「お願いだから、君がその伝説を塗り潰してほしい・・・もう恥ずかしくて無理」



「ははっ、僕は今のところ海さんと同じ道を歩んでいます。だから希美さん以上になれるかはわからないですが、頑張って二人を超えて見せます。僕の永遠の憧れの二人を・・・」



 そう言って彼は鞄を手に持ち、その場から離れていってしまった。その後ろ姿が、より一層海に見えたのは気のせいだろうか。気が小さいながらも逞しいあの背中を。