「おばさん、どうしてそんなに明るく居られるの・・・?」



 とうとう口に出してしまった。あまりにもおばさんが元気すぎるから...しかしそれは私の誤解だったとすぐに知ることになる。



「私も本当は希美ちゃんみたいにいつまでも忘れることはできない。でもね、元気で居ないとすぐに嫌なことを考えてしまう自分が嫌なの。それに、いつまでも私たちが死んだように生きていたら、海だって死にたくて死んだわけじゃないのに報われないじゃない。だからね、海との思い出はしっかり胸に頭に心に仕舞い込んで、明るく生きようって決めたの。そうしたら、そのうちまた会えるかもしれないしね」



 途中で気がついたが、海ママの瞳には透明な今にも溢れそうな水滴が溜まっていた。



「おばさん・・・私もいつかは明るく笑顔になれる日が来るのかな?私、もう一生笑えない気がして・・・」



「大丈夫よ。どんなに辛いことがあっても、人の記憶は日々上書きされていくの。人生はそれの繰り返しよ。だから、大切な思い出はちゃんと心にしまっておきなさい。忘れることがないように・・・その上からいくらでも楽しいことがこれからあるわよ。それに、希美ちゃんにはもうすぐ良い出会いがあると私はあると思うよ」



「出会いですか・・・?私今は誰とも付き合う気ないですよ」



「ふふっ、もし彼氏できたら私たちにも紹介してね。私たちはあなたの両親みたいなものだから」



「頼もしい母親です」



 店内には温かな笑い声が響き渡り、花たちもどこか嬉しそうに咲いているように見えた。