昇降口で上靴に履き替えてそれぞれの教室に向かう。昇降口ではバタンバタンと生徒達が上靴を取り出す音が聞こえる。



 僕ら一年生の教室は校舎の三階にあるため階段を毎日登らなくてはならない。教室に向かう途中でも各学年からの様々な視線を感じる。その視線の先に写っているのはもちろん彼女だけなのだが。



「じゃ、またお昼な!」



 想太と一花は自分の教室へと向かって行ってしまった。やはり、二人の後ろ姿を見ると距離感がカップルらしいなと思えてくる。正直彼女がいるのは羨ましいが、この気持ちは心の奥底にしまっておく。



「おはよう、みんな!」



 この一言で教室の空気が一瞬にして変わるのが肌で感じられるほど、みきちゃんの学校での影響力は凄まじい。別にみきちゃんの性格が女王様気質というわけでもないのに、まるで女王様のように見えてくる。



 簡単にいうと一種の宗教のようだ。風の噂で春風希美ファンクラブというものがあるのを耳にしたことがあるくらい。



「ねぇ海、何ぼけっとしてるの?」



「あ、いやなんでもないよ」



「ほら、席に座るよ!」



 みきちゃんとは席もまさかの隣同士でほぼずっと一緒にいるため、僕はあまりクラスメイト達からは良くは思われていないだろう。むしろ嫌われているのではと思っている。



 幸運なことに僕達の席は窓側の一番後ろの席なので、授業中はほとんどクラスメイトから見られることは少ない。