一週間ぶりに学校に行くが、私の隣には誰もいない。人生で初めての一人登校がこれほどまで喪失感があるなんて一週間前の私は気付くはずもなかった。



 海は心臓が弱かったけれど学校は無遅刻無欠席で、小学生の頃から毎日私と一緒に登校してくれた。ついこの間、2人で遅刻したのが懐かしい。



 毎日歩いていたはずの通学路がなぜだか、いつもとは違う道のようにさえ感じる。景色もそこまでは大きく変わってはいないはずなのに...



「歩道ってこんなに広いんだ・・・」



 二人で歩いていた時は肩が触れ合うくらい狭かったのに。



 学校が近くなってきたこともあり、私の周りには同じ制服を着た生徒たちが少しずつ増えてくる。友達と楽しそうに話しながら登校している人、カップルで登校している人、どこを見ても皆楽しそうな様子をしているように見えてくる。



 私とは住んでいる世界が違うかのような錯覚さえ覚えてしまう。



 時折、私のことをチラチラ見てくる人もいたが、心底どうでもよかった。今までのように尊敬の眼差しなのか、海を失ったことへの哀れみなのか。



「希美、おはよう。久々の学校だな」



 普段とは違う声のトーンで話しかけてくる想太。今までなら彼の声には明るさを含んだ、少し鬱陶しいくらいの元気さがあった。それが今はない。それでもこの声に気付けるのは幼馴染だからなのだろう。



「うん、生まれて初めて一人で学校に登校したよ。私と海は一度も学校を休んだことがなかったから・・・孤独感がすごかった」



 話してから口に出さなければよかったと後悔する。想太といっちゃんの顔に哀しみの色が広がる。



「だよね・・・よければ私たちと毎朝登校しない?」



 そういってもらえて嬉しい気もするが、付き合っている二人の邪魔をしすぎるのは良くないと思い、いっちゃんの優しさを踏み躙らないようにやんわりと断った。