海に無事別れを告げ、外に出るとさっきまでの雨が嘘だったかのように晴れ渡る晴天。灰色に染まった雲も西へと流れていった。



　霊柩車に乗っていく海を三人並んで、傘を片手に見送る。



「海、またいつか会おうね・・・」



　誰にも聞こえないような声で最後に彼に別れの言葉を伝える。次第に霊柩車は見えなくなり、私たちは足並みを揃えて式場をあとにする。



「海、結局心臓のこと自分から話してくれなかったな・・・それに最後に交わした約束の結果、聞けなかったや」



　静かに私たちに語りかけてくる想太の消えそうな弱々しい声。



「そうだね。もっと、いろんなこと話したかったし・・・四人で一緒に卒業したかった・・・大人になってお酒飲んでみたかった。成人式にも・・・言い出したら止まらないくらいしたいことがたくさんあったな〜」



　鼻を啜り涙に堪えながら、叶わぬ夢を語るいっちゃんにつられて涙が出そうになる。



「それは海も同じだったよね。きっとこの中の誰よりも海は一緒にしたかっただろうね。他の人よりも心臓が弱かったから、尚更みんなと同じように平等に生きたかったと私は思うよ・・・」



「だよな・・・俺らで海の分まで生きるしかないのかな・・・俺、ちゃんと胸張って生きられるかな」



「私も海の分まで生きてみようと思う。簡単なことではないけれど、それが私にできる彼への弔いな気がするから」



　二人は覚悟を決めたかのような表情で私を見つめてくる。きっと私の言葉を待っているのだ。私のことを心配して...



「私は・・・私は、海の夢だった教師を目指そうと思う。そして海と同じように学校には通えるけど、運動ができない子たちの良き話し相手になれるような先生になりたい・・・多分、それが海が教師になりたいと思った理由だろうから。しばらく前を向くまで時間はかかりそうだけれど・・・」



　私の言葉を聞いて二人は安心したかのような顔をしてその場を去っていく。"やっとしたいことが見つかったんだね"と言わんばかりの表情で。



　想太といっちゃんの背中は一週間前に見たよりも大きく、そして寂しそうに見えた。