四人で話しているうちに校門まで来ていた。学校の敷地内にも満開の桜が風に揺られながら、生徒たちが来るのを待ち望んでいたかのように花びらを散らしながら揺れている。



 僕たちの高校は県内トップのため、ここに集まる生徒たちは当然のことながら各中学校で成績優秀だった者たちが多い。



 それに学力だけではなく、部活動にも力を入れている。まさに文武両道を兼ね備えていると言っても過言ではない。



 校舎の至る所に、『全国大会出場』の文字を見かけることも少なくない。改めて思うが、この学校はすごい。



 しかし、その優秀者たちですら目を惹く存在が、今僕達のすぐ隣にいる。姿を見かけただけで歓声が上がるほど。まさに芸能人並みの人気。



 『うわ、希美ちゃんだ!』『今日も美しい』などと歩くだけで騒がれてしまう。本人はそのことを少し嫌がっている。正直相手にするのが面倒らしい。色々と彼女は目立ってしまうので仕方がないとも言える。



「相変わらずすごいね。希美ちゃんの人気は!」



「よ、希美様!」



「もう二人ともやめてよ! 二人はいつまでも今のままでいてよー!」



「当たり前だろ!俺らはずっと一緒だっただろ。これからも一緒だよな、海」



「当然だよ。誰も欠けちゃいけないよ」



 僕はこの四人で過ごす日常が好きだ。唯一心を許せる大切な友人。でも僕の心臓が普通の人達と違うことを彼らは知らない。



 この先も話すつもりはない。話して彼らに気を遣われるのが僕は嫌だった。僕だって普通の人と同じように生きていたい。



 それに彼らは優しすぎるんだ。僕は彼らの負担にはなりたくない。毎日を笑って過ごしてほしい。例え、僕の命が尽きたとしても...



 この日常がいつまでもいつまでも続いて欲しいと思っていたが、運命はやはり残酷だった。


 
 この時はまだ誰も一緒に大人になれるのは、三人だけとは思ってもいなかった。



 高校生のきみを残してしまうなんて...