「・・・・・」



 さっきまでの時間が嘘だったかのように、溢れてくる感情の籠った雨。地面に黒色の染みが一つ二つとどんどん増えていく。



 泣いても泣いても一向に止まる気配のない涙。身体中の水分がこの涙になっているのではと思うくらい泣いた。いくら泣いても心の痛みだけは消えることがない。


 むしろこのメールで一層心が壊れていく気がした。修復することが困難なくらいに。



「もう・・・全部が遅いよ・・・海」



 告白してくるのも、あなたの体のことも私は全てを知っているんだよ。それにいつまでも隣にって本当に...もう絶対に叶うことのない二人の悲しげな夢。



「ねぇ、海。本当に・・・"またいつか"に・・・なっちゃったね・・・寂しいし辛いよ。最後の最後でその言葉を聞くのは、耐えられないよ」



 最後に救急車の中で彼が言っていたのを思い出す。そうか、あの時海は自分が死ぬことがわかっていたから最後にこの言葉を言い残して逝ったんだね。



 いつまで待てばいいのかわからない、呪いの言葉を私に期待させて...



 ポケットから二匹の白黒の鳳蝶を取り出す。対照的な"白と黒"白はどんな色にでも染まることができる一方、黒は染まることができない。



 私は海を失った今、これからどんな色へと染まっていくのだろうか...彼は明るい色に染まってくれることを望んでいるだろうが、あなたのいない私には到底無理に等しい。



「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 どこにもぶつける事のできない怒り、悲しみを抱え、手に持っていた二匹の鳳蝶を公園に高らかに咲いている桜の木へと投げつける。当然飛ぶことができない、作り物の鳳蝶たちは桜の木の真下に墜落していく。



 その様子はまるで、儚く散っていく"命"そのものに見える。すぐさま地面に命が尽きたように堕ちていく二匹の鳳蝶。



 やはり、先に地に堕ちたのは海にプレゼントした黒色の鳳蝶だった...