何も考えられず、無意識のまま私たちの思い出が詰まったあの公園まで来ていた。私たちが事故に遭った交差点は今もまだ警察官や鑑識の人たちが何やら作業をしている。



 公園の中に足を踏み入れると、一度に海と過ごした思い出が私の頭の中に流れ込んでくる。笑ったり、泣いたり、喧嘩したり、二人で過ごした公園。



 人は誰もいないけれど、殺伐とした交差点とは違い、なぜだか心が休まる温かさを含んでいるこの場所。



 流れるようにブランコへと足をむけ、引きずるように足を動かす。病院から足を引きずってきたので、靴の側面はボロボロになってしまった。今更、靴がどうなっても私はどうでもいいが...



 ブランコに腰掛けると、隣に海が微笑んで座っている感覚に陥る。昨日のようにこちらを見て笑いかけてくるあなたの笑顔を、もう私は二度と見ることができない。昨日は手が届く距離にいたきみ。



 それがたった一日で触れることも声を聞くこともできないくらい、離れてしまったのを実感させられるのが辛い。



 ブランコを漕ぎ始めると、ポケットから携帯が地面に落ちる。拾おうとした時に顔認証が作動してロックが外れてしまった。