病院に着くと、海はすぐさま集中治療室へと連れて行かれる。私も怪我を負っていたので先生に診察してもらう。



 特に大きな問題はないらしく、数分で手当てをしてもらい廊下に出ると、海の両親がそこにはいた。



「みきちゃん! 大丈夫なの!?」



「はい、私は海に助けられたので、なんとか・・・」



 二人の顔を見て話すことができなかった。一体どんな顔をして二人に話せばいいのかわからない。



「そう。みきちゃんが無事でよかったわ。今は海の無事を一緒に祈りましょ。話はその後でもできるから」



「はい・・・」



 それから私たちは海の手術が終わるまで集中治療室の前の長椅子に座り待ち続けた。



 誰もいないのかというほど、無音の廊下。より一層この静けさが私の心を圧迫しているように感じた。



 二時間ほどして、集中治療室の扉が開かれる。中から出てきたのは、海の担当医の相馬先生だったはず...確か海は先生のことを"第二の父親"として慕っていると海ママから昔聞いた気がする。



「あ、あの先生!海は無事なんでしょ・・・うか」



 椅子から立ち上がり、先生に詰め寄る海ママだったが、言葉に詰まってしまっている。二人から話し声は一切聞こえてこない。



 私も先生に詰め寄り口を開こうとするが、その口は開けられることなく静かに閉じていく。



 先生は、声を殺しながら唇から血が出るほど、悔しそうに噛み締めて泣いていた...まるで我が子を失ったかのように。



 その様子がどんな結果を意味するのか、私は言葉がなくてもわかってしまうくらい大人になってしまっていた。