あと数分で学校に着くというところで、後ろから声をかけられる。



「おーい、今日も仲良く登校ですか!」



「二人は本当に仲がいいね。もう付き合っちゃえば?」



 "あー、朝から面倒なのに捕まった"と心の中で思う。



「いやー、本当に希美と海とクラス違うとか無理なんだけど・・・」



「いいじゃん、想太(そうた)には私がいるじゃん」



 朝からテンションが高い高木想太(たかぎそうた)上野一花(うえのいちか)もみきちゃんほどではないが、小学生からの長い付き合い。クラスもずっと一緒でいつも四人で遊んでいた。



 高校生になって初めてこの四人がクラスバラバラになった気がする。僕とみきちゃんは二組で想太と一花は五組。この分かれ方も奇跡みたいな感じもするが。



「希美ちゃんと海が付き合ったらダブルデートできるよ! してみたいなー!」



 想太と一花は中学二年生の体育祭の時に想太から告白をし、無事カップルとなった。僕とみきちゃんは両思いであった二人の情報を共有して、なんとか想太から告白させるように誘導することができたが、あまりにも想太が弱気で大変だったのを覚えている。



 今の姿からは全く想像できないくらい自信のない男だった。



「僕とみきちゃんはただの幼馴染だから」



「意外と希美ちゃんが好きだったりしてね」



「え、え。そんなわけないじゃん!海は幼馴染だよ・・・」



 僕とみきちゃんは幼馴染...彼女に恋心を抱いてはいけない。彼女には笑って生きてほしいから、こんな心臓が弱い人間ではなくもっと健康でかっこいい人と共になって欲しい。僕のわがままに過ぎないが。



「なな、俺さずっと気になってたんだけどさ、なんで海だけ希美のことみきちゃんて呼んでるの?他に誰もそう呼んでる人いないよな。」



「んー、なんでだっけ。昔からだからな。忘れちゃったや」



 忘れてなんかもちろんいない。あれは想太と一花に出会う前の時...でもこれを他の人に話すとみきちゃんは怒ってしまうので話さないことにしている。僕とみきちゃんだけの秘密。